最近、2つの美術展を立て続けに見に行った。
1つは兵庫県立美術館で開催の「怖い絵展」、もう1つは渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催の「ベルギー奇想の系譜」。

前者は、数年前に話題になった中野京子氏の書籍「怖い絵」をベースにしたもの。
タイトルは「怖い絵」とあるが、絵的に直接的におどろおどろしいものはほとんどなく、その絵のバックストーリーに怖さがあるものが多い。
通常の美術展では「見た人が感じること」が重視されるので解説は控えめだが、こちらではバックストーリーやどういう点に注目すべきなのかを比較的詳しく解説されている。
つまり「美術初心者にやさしい」と言えるだろう。

後者は、15世紀以降のネーデルランド地域の画家の絵、とくに、15世紀のヒエロニムス・ボス、16世紀のピーテル・ブリューゲル1世を中心に集めたもの。
両者の、南欧のルネサンス絵画とは一線を画した独特、かつ、奇想的な(キリスト教的な)悪魔や怪物の描写はひじょうに興味深い。
見せ方も工夫されていて、ボスやブリューゲルの戯画的な世界を面白く紹介していたが、こちらはもう少し展示されているものに解説が欲しかった。

この両美術展を見て思ったことは、西洋美術、とくに17世紀以前のものを見るには、ギリシャ・ローマ神話やキリスト教のこと、ものによっては歴史的背景をある程度知っていないと、ろくに楽しむことができないということ。
そういったものを知らないと、技法だの流派だのがわからない(関心の低い)私のような美術素人にとっては、ただ「キレイな絵だな」で終わってしまったところだろう。

幸い、私は(私の世代?)は、子供の頃にTVでやっていたキリストの生涯を描いたアニメ(トンデラハウスの大冒険、パソコントラベル探偵団とか、昔はそういうのがけっこうあった)で聖書世界については多少知識を持っているし、ギリシャ神話は小説などで断片的であるが知っているエピソードが結構ある。
世界史はそもそも好きな方。
そのために、けっこう意味がわかる絵も多かった。

こういうのをいわゆる「教養」というのだろうが、考えれば、学校ではそういうのを教わったことがない。
歴史の授業といえば戦争と政権絡みで人名と年号を覚えさせるものばかりだし、宗教観については道徳が科目として一番違いのだろうが、世界の三大宗教の宗教観すら教えられていない。
これは日本のことですらそうで、歌舞伎や文楽などの古典芸能で描かれる当時の日本人の感性であるとか死生観みたいなものも、知ってさえいないのが現代の我々。
「社会生活で直接役に立つわけでもない歴史を学校で学ぶのはどうしてか?」という質問に対して、「教養」と答える先生はいるが、実際には絵や音楽、芸能を「楽しめる」ための基礎的教養すら身に付けさせることができていない現状をどう考えているのだろうか?
試験の点取り方法や政治的側面ばかり着目される歴史教育だが、その意義を今一度見直すべきだと思う。

あ、いずれの美術展もけっこう混んでいますが、面白くてすごくお勧めです。

怖い絵展