航空運送と犬

以前の記事で、リチウムイオン電池や液体入りペットボトルは、航空運送に制限があると説明しました。
航空運送では、運送制限のある貨物がけっこうあります。

そのうちの1つが「短鼻種(短吻種)犬」で、これはほとんどの航空会社で運送を断られます。
短鼻種犬とはその名のとおり、鼻が短い種類の犬種で、シーズーやパグ、ブルドッグといったものがこれにあたります。
その理由は、関税法などの輸出入規制ではなく、航空会社による運送規則によるものです。
なので、国際便だけでなく、国内便でも同じです。

リチウムイオン電池や液体入りペットボトルの運送制限は、「機体や乗客、他の貨物を守るため」ですが、短鼻種犬は逆に、その貨物そのものを守るためだったりします。
理由は、簡単に言えば「死亡してしまう可能性があるため」です。
短鼻種犬は先天的に呼吸器に弱点があって、鼻による呼吸が浅い犬種で、航空運送中の気圧の変化で呼吸困難を起こしたり、鼻呼吸できにくいことで気温の変化による熱中症の可能性が高いそうです。
事実、米国では2005年から2009年の5年間で航空事故で死亡した犬のほとんどが短鼻種犬だったそうです。

難しいのは、純血種であればわかりやすいのですが、短鼻種犬の混血種(雑種)の場合です。
航空会社は混血種である場合にも運送を断りますが、全ての犬について判別することはかなり難しいといえるでしょう。
その場合に、荷主(飼主)の意向で運送をして事故が起こったとしたら、航空会社に責任はあるでしょうか?
これは基本的には航空会社には責任はないと言えるでしょう。
航空運送の原則に「Ready for Carriage」というものがあり、これは、航空貨物は「航空会社が貨物を受託してそのままの状態で発送できる状態」であることが求められるというものです。
この原則により、荷主(飼主)が十分にケアしなかったために事故が起こった、よって航空会社には責任がないということになるわけです。

これは実際に数年前に、某航空会社がペット預かりサービスで預かった犬が死亡した事故があり、航空会社には責任がないということが話題(賛否両論)になったことがあります。
(こちらは、短鼻種犬というよりは、子犬だったために体温調節能力が低かった可能性があります。)
飼主にとってはペットは大事な家族ですが、運送業者にとってはしょせんは貨物ということですね。
犬は業者がペット用に輸入することもあれば、自分のペットとして運送受託をすることもあります。
犬の安全運送の責任は荷主側にあるということは、肝に銘じておきたいですね。(I)

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