不発弾と海上保険

ゴールデン・ウィーク終盤の5月9日(土)、大阪の繁華街、難波周辺には珍しい風景が広がっていました。
少し前に発見された、太平洋戦争時の不発弾(1トン爆弾)の処理のために周辺が立入禁止になり、普段はにぎやかな街がひっそりとしていたのです。
不発弾の発見と処理のニュースはちょくちょくありますが、陸上自衛隊の推計では、全国にまだ約2,600トンの不発弾が埋まっているそうです。
(全てが爆弾ではなく銃弾も含まれ、なかには戊辰戦争当時のものも含まれるそうです。)

このように陸上では爆弾が見つかるわけですが、貿易運送の舞台である海上ではどうでしょうか?
実は海上においても不発弾の問題はけっこうリアルだったりします。
それは、数年前に戦争をしていたペルシャ湾といった遠いところだけでなく、日本近海にもある問題なのです。

海にばら撒かれる爆弾を機雷とか水雷などと呼びますが、残っているもの(発見されるもの)は太平洋戦争時のものです。
海上自衛隊は99%を掃海したと推計していますが、いまだに年に何個か発見・処理されています。
近年のものを少し挙げましょう。
・2006年5月 富山県伏木港で発見・処理
・2010年6月 神戸中央航路で発見・処理
・2013年6月 関門海峡で発見・処理 ・2014年5月 山口県埴生漁港沖で発見・処理
ほとんどが瀬戸内海近辺だそうですが、ときおり日本海側や関東方面で見つかることもあるようです。
(中には、旧軍が海中投棄したものもあるようです。)

こういう何十年も前の機雷でも、うっかり接触すれば爆発の可能性はゼロではありません。
当然、これは運送リスクということになりますが、こういう機雷によるリスクは保険でカバーできるでしょうか?

答えは「内航貨物海上保険ではカバーできないが、外航貨物海上保険ではカバーできる」です。
ただし、外航貨物海上保険であっても、普通の保険約款ではカバーできず、特約である「戦争保険(協会戦争約款:Institute War Clauses)」を付保しなければなりません。

「戦争保険」というと、なんとなく「今、起こっている戦争や紛争、テロによる危険をカバーするもの」と思いがちですが、不発弾のように何十年も前にあった戦争の遺産による損害もカバーするということは覚えておいたほうがいいと思います。
また、上記のとおり、日本近海の機雷は99%処理されたと推定されますが、そもそも先の大戦中にばら撒かれた機雷は日米合わせて7万個近いので、まだ700個ほどはどこかに沈むか浮かんでいるわけです。
こういう不発弾の問題がある以上は、「日本周辺はいま戦争しているわけでも、戦争が起こりそうでもないから、戦争保険はいらない」というわけではないということも肝に銘じておくべきかもしれません。(I)