神戸税関・保税倉庫見学記 1

先日、私が講師をしている大阪の専門学校の学生を引率し、神戸税関と保税倉庫の見学に行ってきました。
大阪の学校なのに、大阪ではなく神戸の税関を見学するのは、こちらの方が税関展示室の内容が充実しているからです。

人数が多いので貸切りバスを用いたのですが、バスの運転手さんにお願いして、少し遠回りになるものの、阪神高速湾岸線を通ってもらいました。
阪神高速湾岸線は側壁が低いため、大阪港の港湾施設を遠望することができますし、また、輸出船積みを待つクズ鉄や中古車が置かれている岸壁も見ることができます。
こういったリサイクル物品は、阪神港(大阪湾沿岸の港湾の総称)の重要な輸出品だったりします。
湾岸線沿いには、多くのフォワーダー、倉庫業者、運送業者、さらには、製造業者が拠点を置いています。
まだ貿易に関係する業者について十分に理解していない学生には、「こんなに多くの企業が貿易に関係している」と、いい実地教材になったのではないかと思います。

神戸税関 東側時計塔さて、最初に見学したのは神戸税関です。
神戸税関の現在の建物の、昭和2年(1927年)に完成した東側にある時計塔が神戸のランドマークとなっています。
西側は戦後に立てられていました(当時は分館と言ってました)が、阪神大震災で倒壊したので平成10年に建て直されました。
東側が大した被害を受けなかったことを見ると、昭和初期の建物がいかに丈夫に造られていたのかがわかります。
なんでも、関東大震災(1923年)の教訓を生かした(設計は大蔵省営繕課)とのこと。
おかげで、神戸税関本館は昭和を舞台にした映画の撮影場所でしばしば使われています。
有名なところでは「ALWAYS三丁目の夕日」、新しいところでは「日本のいちばん長い日」で使われていますので、興味の湧いた方は、当該映画から探されてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、神戸税関の東側には、旧神戸市立生糸検査所という同じく昭和2年に完成した歴史的建造物があります。
こちらも関東大震災にその由来があります。
当時の日本では生糸は重要な輸出品で、大輸出港だった横浜には横浜生糸検査所がありましたが、関東大震災で大きな被害を受けました。
横浜の検査所は1926年に再建されましたが、このような大災害が再発したときに、やはり横浜だけだと心許ないということで「神戸にも生糸の検査所を」として設けられたのが、この旧神戸市立生糸検査所だそうです。
当時の人は、起こるかもしれない自然災害へのリスクヘッジをよく考えていたということですね。
今は、デザイン・クリエイティブセンター神戸(通称KIITO)という神戸市の施設になっています。

税関のビデオさて、神戸税関の見学ですが、団体見学では、まず税関の役割を紹介するビデオ上映と広報広聴室の方による質疑応答をしてもらえます。
税関の広報ビデオは、Youtubeにあるものとは別の神戸税関オリジナルのもの。
神戸税関管轄の港の状況も踏まえたものなので、一見の価値ありです。
(数パターンあるうちには、少し情報が古いものもありますが。)
団体見学コース、続いては税関広報室の見学です。
神戸税関の広報室は、一般の方にもわかりやすいように趣向が凝らしてあります。
密輸の手口、知的財産権侵害物品のサンプル展示、ワシントン条約で規制される物品など、ビジュアルだけでなく、クイズなど体験型の展示をしてあります。
引率した学生の皆さんも、大喜びで時間があっという間に過ぎてしまいました。
最近は「大人の社会見学」と称して、工場や施設などを見学することが流行っていますが、神戸版のガイドブックにも出ている神戸税関広報展示室、私からもオススメです。
あ、もちろん、カスタム君の大きなぬいぐるみもありますから、いっしょに記念撮影もできますよ。

税関広報室なお、団体見学の大きなメリットとして、税関の方による解説の他に、税関庁舎の西側屋上に上がれるというのがあります。
東側の時計塔とほぼ同じ高さなので、税関旗とともに記念写真を撮る絶好のスポットです。
また、海際にあるので、港の様子がよく見えますので、そちらに向いての記念撮影もいいでしょう。
屋上からは神戸港のシンボルであるポートタワー、ガントリークレーンなどの港湾施設、川崎重工や三菱重工の工場群がよく見え、運がよければ寄港している豪華客船や大型帆船を見ることもできます。
屋上はヒートアイランド対策で芝生が敷き詰められています。
ただ、この時期、コオロギがたくさんいましたので(いつのまにか住みついたそうです)、昆虫が苦手な人はダメかもしれませんけどね。
団体扱いは10名以上でしてもらえるようなので、グループを作って見学会などいかがでしょう?
お昼時なら、税関の食堂という手もありますよ。

次回は神戸税関を発ち、ポートアイランド内の保税倉庫のお話をします。(I)