さすが、税関の人はスルドイ!

一昨日(1月13日)、金の延べ板130kgや時計など11億円相当分を、日本に密輸入しようとしたとして、大阪の自営業者ら10名が逮捕されたという事件のニュースがありました。
この金額は、金の密輸としては過去最高額だとのこと。
旅客手荷物として預ける際に中身を「化粧品」と申告したダンボール箱に、金や時計などを隠していたという、手口としてはオーソドックスなものです。

関西国際空港で発覚した事件ですが、どうして見つかったか?
それは密輸グループが「化粧品にしてはやけに重たそうに、そして、やけに慎重に運んでいた」ので、これは怪しいと税関職員が気付いたのがきっかけだったとのこと。
税関による密輸摘発事例には、こういう税関職員の「気付き」による話がよく出てきます。
さすがプロだなと感心します。

ところで、金は、麻薬や武器みたいな輸入してはならないものではないのに、なぜ隠していたのでしょうか?
容易に想像がつくと思いますが、税金を逃れるためです。
ただ、税金逃れというと、「関税のことだな」と思ってしまうかもしれませんが、それは違います。
実は金も時計も関税率は0%なので、関税のためであれば隠す意味はありません。
今回、密輸者が逃れようとしたのは「消費税」、一般には「輸入消費税」と呼ばれるものなのです。
隠して輸入することで、消費税の支払いを逃れようとしたわけですね。
結論としてこの密輸では、関税法の無許可輸入に加えて、消費税法に違反しての脱税に該当することになるわけです。

なぜこのような密輸が行われるのか?
知っている人は知っていますが、20万円以上の貨物を輸入しようとする場合は、私たちが国内でモノを買うときと同じく8%の消費税がかかります。
一方、日本国内ではモノの購入者が消費税を販売者に対して支払うことになります。
ここであえて金の転売価格が上昇しないとすると、輸入時に支払った消費税が8%、売却時に受け取った消費税が8%で差し引き0%になります。
しかし、輸入時に消費税を逃れれば、8%が丸々懐に入ることになります。
商品を転売するだけのビジネスとしては利ざやが8%というのはけっこう大きいものです、消費税率が高くなればなるほどウマミは増します。
そのため、消費税が8%にアップされてから、この手の密輸が増加傾向にあります。
また、金は国際価格なので世界共通、つまり、場所を移して転売するだけでは利益がでない「はず」のものです。
しかし、それはあくまでもドル建ての話であって、為替相場の関係で海外でドルで購入した金を、日本で円で売るとワリがいいということも背景にあるようですね。
税関当局によると、金密輸入の摘発件数は、去年はその前年から比べて22倍と大幅にアップしています。
(もっとも、密輸の全量が増えただけでなく、摘発テクニックが向上した結果もあるかもしれませんが。)

ちなみに、「海外旅行をさせてあげる」と言って若者を誘い、その代わりに手荷物として金を持ち帰らせるという手口もあるようです。
中身を知らなければ、空港で挙動不審になりませんから、怪しまれる可能性が低いというわけですね。
金の密輸の片棒を担がされることにならないよう、うまい話には気をつけなければいけません。(I)