多目的貨物船見学記 その1

South Islanderの船尾から。

日本船主協会主催のイベントで、多目的貨物船の見学会に行って来ました。
当社も参加している「海と日本Project」のイベントでもあります。

今回見学させてもらったのは、日本郵船(株)の子会社、NYKバルク・プロジェクト貨物輸送(株)の「South Islander」という船です。
South Islanderは2007年竣工の船で、全長161m、全高47m、総トン数18,174t(載貨重量トン18,091t)と、外航貨物船としてはそれほど大きい部類ではありません。
しかし、コンテナ、在来貨物(バルク貨物など)、RO/RO貨物を同時に積むことができる特徴的な船です。
そのため、前から見るとコンテナ船、後ろから見ると自動車運搬船のように見えます。
ただし、コンテナ専用船と違って、船上にクレーン(40t)2基装備しています。
なお、RO/RO設備(ランプウェイ)があるので、クレーン作業をしている最中でも、後部では自動車やトラック自走による荷役は可能です。
 
釣り上げて積むコンテナ貨物と在来貨物を同時に積むことができる船としてはセミ・コンテナ船という種類がありますが、セミ・コンテナ船は甲板上にコンテナ、船倉(甲板下)に在来貨物を載せるのに対して、South Islanderでは、船倉内にもコンテナを積みつけることができるようになっています。
これによって、コンテナ貨物、在来貨物それぞれの多寡に柔軟に対応して無駄なスペースを作らず、効率的な運送ができるようにできるようになっています。
  
このような構造になっている理由としては、この船が運送する航路が大きく関係しています。
この船は南洋地域を回る定期船で、日本(神戸・名古屋・横浜)、韓国(釜山)を出港した後は、ソロモン諸島、バヌアツ、ニューカレドニア、フィジー、トンガ、サモア、米領サモア、ポリネシア、キリバス、マーシャル諸島を巡って帰ってきます。
一巡するのに約70日かかるそうです。
これらの国の港湾にはガントリークレーンなどの巨大な設備がないことが多いため、船上のクレーンを使う必要があることが、クレーンを2基積んでいる理由です。
また、小さな国ばかりですので、コンテナ貨物、在来貨物、自動車いずれにしても、それぞれの運送に特化した船が必要になるほどの貨物量がないため、なんでも、そして、ある程度の量を運ぶことができる船が必要になっているわけです。
船に積まれているクレーン例えば、現在、世界最大のコンテナ船では20フィートコンテナを約15,000個積載することができますが、South Islanderに積載することのできるコンテナ数は約850個です。
その代わり、同時に自動車を約730台積むことができます。
この船会社では、同航路に同型の船を4隻運航させて、このあたりの貨物ニーズに対応しているそうです。

外航貨物船は、保安上の問題、そして、荷役中の船は、一般人がウロウロすると事故が起こりかねない危険な状況なので、一般人はなかなか乗船させてもらえません。
ですので、こういう見学会が開催されても、案内される方の目が届く範囲ということで募集人数が少ない(今回は15名)のが通例です。
そういうひじょうに貴重な機会なのですが、船というのは天候や荷役の都合でスケジュールが狂ってしまうことがあるもの。
今回の見学会(名古屋港で開催)も、本当は7月20日の予定だったのが、1日遅れの21日になりました。
そのために、参加できなくなった方もおられたようで、当初の人数をけっこう下回ってこじんまりとした見学会になりました。
もっとも、そのおかげで予定外の場所まで見せてもらえることになりました。

では、船の内部の話は次回にお話しいたしましょう。(I)
(続く)

船員さんと参加者で