先日の記事で、国土交通省が平成29年度税制改正要望で、「空港の入国エリアに免税店の設置を認める制度の創設を求める方針を固めた」というものがありました。

空港入国エリアにも免税店=海外旅行者の買い物取り込み-国交省」(時事通信 2016/08/27)

日本の空港では、出国審査後、飛行機に搭乗するまでの「出国エリア」に免税店エリアがあるのは、海外旅行に行かれたことがある方はご存知だと思います。
多くの方には、空港にある「空港免税店」になじみがあるでしょうが、外航旅客航路を持つ海港にもあります。

しかし、これも海外旅行に行ったことはご存知のとおり、日本では飛行機から降機後、入国審査までの「入国エリア」には免税店エリアがないこともご存じと思います。
時々聞く笑い話に、初めて日本から海外旅行に行った人が出国エリアの免税店を見て、「荷物になるから日本の免税店で買おう。」と思っていたら、日本の入国エリアには免税店がなくガッカリするというものがあります。
今回のこの税制改正が実現すると、こういう笑い話もなくなるでしょう。
このような「入国エリア」の免税店は海外ではすでに導入されている国もあります。

「免税」というからには、どんな税金が免除されるのかということになりますが、日本では関税や消費税たばこ税、酒税などです。
ではそもそも、この免税店というのはどういう根拠で成り立っているのでしょうか?
それは、貿易実務や通関士の勉強でおなじみの「保税地域」、もっと言えば「保税蔵置場」として許可を受けている場所なのです。
ですので、税関による保税地域一覧表には、国際空港のある場所に「蔵置貨物の種類」として「保税売店において販売する貨物」と挙げて許可を受けていた会社があるのを見て取れます。
パスポートのチェックを受けて出国審査を抜けると、税法上では「日本の国土にあるが日本ではない場所」ということになるので、税金を取られることがない(税金が掛からない)わけです。
日本以外のどの国でも、免税店というものは基本的には同じ考え方の下に成り立っています。

ただし、ここで気を付けなければいけないのは、税が取られないのは、あくまでも出国する国での税だということです。
なので、出国する国の免税店物品を購入したとしても、入国する国で課税対象となるものであれば、当然税金を取られます。
これも、初めて日本から海外旅行に行った人の話ですが、海外の免税店で「日本でも免税されるもの」と勘違いして、たくさん買物たくさん買物をしたところ、日本入国時に課税されて驚いたというのも、聞いたことがあります。
また、税を取られないのは、その国から出国する場合のみだということにも注意が必要でしょう。
例えば、出国することを前提に免税店で買物をしたのはいいけれども、なんらかの事情で出国を取りやめて戻る(この場合は入国審査を経ます。)場合には、その国の免税店で購入したものであっても、課税対象になります。
いずれも、上述のとおり「保税地域から国外に出るときは課税されないが、保税地域から国内に入るときは課税される」という原則にあります。

ですので、(現時点では制度の詳細は明らかになっていないものの)、原則に照らし合わせて考えれば、今度できるらしい「入国エリアでの免税店」についても、免税なのはあくまでもそこの免税店で買物をするそのタイミングでは、消費税や酒税、たばこ税は課されないというだけの話なのだと思います。
その後、入国審査 を経て税関検査の段階では、海外からの手土産と同様に課税されるということですね。
関税については、免税店にあるものが日本産品や外国産品でも関税支払い済みのものであれば課されませんが、関税が支払われることなく置かれているものについては課されるという形だろうなぁ、と想像できます。

となると、「結局、税関審査で課税されるのなら、入国エリアの免税店って意味がないんじゃない?」と思われるかもしれません。
ところがそうではなく、「旅行時の手土産のような携帯輸入では、一定範囲まで免税という扱いになる」ことが利用できるのが、この制度のポイントなのです。
例えば関税の例であれば、酒類は1本760ml程度のものが3本まで、紙巻たばこは200本までが免税のほか、市価の合計額が20万円までの物品が免税なのはよく知られています。
なお、意外と知られていませんが、1品目毎の市価の合計額が1万円以下のものは、20万円の免税枠の計算に含める必要がありません。
そして、関税が免税となるものの一部については内国消費税も併せて免税することが「輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(輸徴法)」で定められています。
そのため、入国エリアの免税店で海外から持ち帰ってきたものと合算したものが、上記範囲内であれば免税で持って帰ることができるというわけですね。
出国エリアから重いお土産をえっちらおっちら機内に持ち込んで、必死になって荷物スペースに押し込まなくても、「日本の入国エリアの免税店で買えばラクラク!」となります。
また、海外ではなく、日本でお金が落ちるので経済効果もある、空港運営会社も潤うといえますね。
といっても、課税されるのが確実なレベルの高額品を置く意味はないので、ちょっとした食品やお菓子、お酒やタバコ程度だけかもしれません。

考えられる課題としては、すでに出来上がっている日本の空港で、入国エリアのどこに免税店を作るのかということでしょう。
保税地域内にあるべしという建前上は、入国審査カウンターより手前(飛行機側)に作るのが筋というものです。
しかし、日本の空港では、入国審査の後に、受託手荷物をピックアップする場所(バゲッジエリア)に向かう形になっています。
入国審査カウンターより手前に免税店を作る(おそらくスペース的に余裕があるのもここでしょうが)と、ショッピングを長々と楽しんでいるうちに、自分の受託手荷物はラウンドテーブルをぐるぐると回り続けることになります。
いつまでも持ち主が現れない不審なものなのか、単にまだ来ていないのかわかりにくく保安上不安な気がします。
それを避けるために、欧州の空港には免税店をバゲッジエリアに設けているところもあるようです。

まだ詳細が見えていないこの制度ですが、どのようになるのか、そしてそれによって海外旅行の導線がどう変わるのか、楽しみです。(I)