JX エネルギー水島製油所&サノヤス造船水島製造所見学記 その1

先日、日本船主協会主催の「JX エネルギー水島製油所&サノヤス造船水島製造所 見学会」に行って来ました。
「海と日本Project」のイベントでもあります。

いずれも岡山県倉敷市の水島臨海工業地帯にある施設です。
実は私は、倉敷市水島の生まれなのですが、生まれてすぐの頃にしかいなかったので、臨海工業地域をちゃんと見学するのは初めてです。
水島臨海工業地帯には約250の事業所があり、高梁川の河口域の三角州、埋立地などに広がり、A地区~E地区に分かれています。

JX水島製油所の入口看板最初に見学したのはJXエネルギー水島製油所。
「JX」と言われてどんな会社かイメージがわからない人も、「ENEOS」と言えば、「ああ、あのエネゴリ君の!」とわかると思います。
その水島製油所は、臨海工業地帯の中枢部である水島コンビナートと呼ばれる地区にあります。
A~C地区にまたがり、A地区にある施設はA工場、B、C地区にある施設はB工場と称されています。
敷地面積は331万平方メートルという広大な敷地を誇り、1日あたり34.5万バレル(5.5万キロリットル)の原油処理能力を持つ、日本最大級の製油所です。
ちなみに、日本の1日あたりの原油消費量は約430万バレル(世界エネルギー統計2015より)ですから、この工場が無くなってしまうと、石油製品の1割近くがここで製造されているということになります。

見学は、事務所棟で事業概要の説明を受けた後に、バスで施設内を回る形で行われました。
ヘルメットや防塵メガネの着用はこの手の見学会ではお約束ですが、今回はそれに加えて、足首に結わえて地面に垂らすことで静電気を散らすアース紐が配られました。
空気中に石油成分が漂っている場所で、静電気によって発火するのは危ないということですね。

この製油所では、原油を蒸留装置で温度ごとに石油ガス・LPG、ガソリン、灯油、軽油、残油と様々に精油した後、様々な石油製品に精製していくことができます。
そこらじゅうにのたくるパイプラインや装置、施設は、その配置からして様々な特許技術が用いられていて、わかる人が見ればわかるそうで、写真撮影は一切禁止です。
もっとも、私のような素人にはどこでどういう加工工程が行われているのかさっぱりわかりません。
役割などがわかるものと言えば、原油タンクぐらいのものです。(笑)
ただ、原油タンクには「保税」と記されており、「なるほど、ここは保税工場なのだな。」と知ることができました。
(後で、税関ホームページで確認したところそうでした。)
ちなみに、この工場には原油タンクが20基以上ありますが、最大のものは直径83メートル×深さ53メートル(26万キロリットル)という超巨大なものでした。
設備は日々進化しているそうで、最近ではこれまでは残滓としていたものを再資源化することができる設備や、副産物であるコークスを焚いて発電する設備などを備えています。

見学途上に、タンクローリーにガソリンを積む施設があったのですが、そこに停車していたローリーには「出光」のマークが。
「なんでJXの施設に出光の車が?」と思ったのですが、ガソリン各社で拠点のありかが地域によって偏りがあるので、レギュラーガソリンは融通しあい、ハイオクなどの高級ガソリンは各社独自でやっているとのことでした。
「業界の意外な話」というやつです。

LPG船コンビナートと呼ばれるだけあって、この製油所で作られた製品は、近隣の様々な事業所にパイプラインで供給されています。
そのため、出荷方法(船舶、トラックなど)の内訳としてパイプラインによる割合が比較的高いのがここの特徴だそうで、もちろん、その逆に他事業所からの供給もあるとのこと。
いままで、コンビナートというと、ただ工場が集積しているというイメージしかありませんでしたが、こういうふうに各社間で融通できることで生産効率を上げているのだと知りました。
JXパイプラインといえば、なかには2012年の「海底パイプライン建設中の出水による死亡事故」を覚えている方もいるかもしれません。
このパイプラインは、湾を挟んだA工場とB工場をつなぐ海底トンネル内に建設されようとしたものですが、5名の方が亡くなるという、ひじょうにいたましい事故でした。
見学ではこの話は伏せるだろうと思っていたのですが、トンネル入口跡付近に寄ったとき工場の方が説明され、不都合を隠さない姿勢に好感を持ちました。
なお、事故の起こったトンネルは封鎖され、現在では別のトンネルがA工場とB工場を繋いでいます。

これほどの製油所であっても、原料となる原油がないと話になりませんので、水島製油所には30万トン級(全長340メートル)のタンカーが着岸できる桟橋があります。
しかし、水島港は水深が浅く、満載で入港することができないのだとか。
これでは、せっかくの設備なのにパフォーマンスが十分に発揮できないわけで、今後の港の改善が望まれるところです。
見学でタンカーが接岸している様子を見ることができないか期待したのですが、残念ながら、今回は入港していませんでした。
その代わりといってはなんですが、LPG船(液化石油ガス運搬船)が着岸し、荷揚げしている様子を見ることができました。巨大タンカーほどではないものの、十分に大きな船です。
このLPG船が運んできたのは、水島製油所の敷地内に設けられている「倉敷国家石油ガス備蓄基地」に貯蔵されるものです。
いざというときのために、地下約180mに40万トン分を備蓄できる設備があるのだとか。
地上からは、そんな壮大な設備があるということはちっともわからないんですけどね。

お土産最後に、シールやメモ帳、ボールペンなどエネゴリ君グッズをいろいろ頂きました
JX水島製油所では、学校や団体からの見学を受け付けているそうです。
それ以外でも、イベントとして、上述の海底トンネルを歩くツアーをもあるそうですから、興味のある方はイベント情報をチェックしてみて下さい。

次回は、サノヤス造船所の見学についてお話しします。(I)