大阪港見学会に参加しました

9月17日、大阪市港湾局実施の「大阪港見学会」(大阪市の市政モニター事業)に参加しました。
海側から、港湾設備を解説付きで見学できる機会は滅多にないので、貴重なイベントです。
大阪市はかつて「夢咲」という広報船を持っていたのですが、数年前に行政改革で佐世保の民間船会社に売却されたので、今回はキャプテン・ラインという天保山とUSJを結ぶ船を借りていました。
屋上にも座席があるので、教材用の写真を撮りたい私は船室にも入らず、すぐさま屋上へ。

船は、ポケモンGoの「聖地」として一躍有名になった天保山ハーバー・ビレッジから出港です。
噂以上にたくさんのポケモン・トレーナーが歩き回っていました。
ちなみに、天保山は標高4.53メートルと日本で二番目に低い山(一番低いのは、仙台にある標高3メートルの日和山)ですが、この山そのものが大阪港の史跡。
江戸時代に大型船の入港をしやすくするために安治川を浚渫した土でできた築山で、昔は20メートルほどあったそうですが、地盤沈下で今の標高になったそうです。

さて、大阪港は大きな港ですが、今回の見学航路では、その中心部、築港(天保山)地区、舞洲(まいしま)、夢洲(ゆめしま)、咲洲(さきしま)を巡りました。
大阪港は旅客、貨物両方の航路をもち、それぞれの需要に応えるための施設を持っています。

天保山フェリー・ターミナルまず、旅客ですが、出港してすぐの天保山客船ターミナルが外航クルーズ旅客船埠頭となっています。
海遊館(水族館)北側のこのエリアには、平成27年には21隻、13.8万トンの客船が入港しています。
私もが、大阪市ではこの天保山地区一帯を盛り上がる目的で「クルーズ客船母港化構想」を進めているとか。
客船誘致のインセンティブとして、24時間停泊で約330万円かかる使用料を無料にする大盤振る舞いをしているそうです。
そういえば、昨年、ここを訪れたときに豪華客船が停泊していました。
咲洲のコスモスクエア地区にも国際フェリーターミナルがありますが、こちらは定期航路用で、現在、上海行(2週3便)と、釜山行(旅客週3便、貨物週2便)が運航しています。
大阪に住んでいても、多くの人は「船旅」をしたこともないでしょうから、こんなに頻繁に外航客船の便があることを、この見学会で初めて知った人も多いのではないかと思います。
外航航路埠頭にのわりに、免税店がなかったような気がしましたが、インバウンド消費を盛り上げるには、そういう施設を充実させていくことも必要ではないかと思います。

もちろん、内航フェリーターミナルもあり、咲洲の南港地区周辺には3か所のフェリーターミナルがあります。
現在、愛媛(東予)、福岡(新門司)、大分(別府)、鹿児島(志布志)、沖縄の5つのカーフェリー航路があります。
往時には愛媛も松山行や高知行もあったのですが、本四連絡橋ができてから減ったそうです。
エコロジーの観点からのモーダルシフトを目的として、カーフェリー航路はもっと増えてもいいと思うのですが。

一方、貨物ですが、2015年の大阪港の貨物取扱実績は、約8,000万トン、外貨コンテナ取扱個数は約200万TEUです。
(※ TEU:20フィートコンテナ1本分)
埠頭以外にほとんど施設を必要としない旅客と違い、倉庫などの大規模な施設を必要とするので大阪港の多くのエリアを占めますが、外国航路(外貿)の施設は、夢洲と咲洲に集中しています。
土曜日なので、それほど多くに船は停泊していませんでしたが、それでも、在来船、コンテナ船がいくつか停泊、かつ、荷役作業をしている様子を見ることができました。
今回の見学では、見学船が停泊している船のかなり近くにまで寄ってくれたので、かなり良く見えました。

JP CORAL在来船としては、出港してすぐ、天保山から安治川を挟んだ向かい側にある桜島埠頭に石炭運搬船が停泊しているのを見ることができました。
船名「JP CORAL」を調べると、日本の船会社、飯野海運の全長228メートル、総トン数44,547トンのバルク貨物船でした。
この船から降ろし、すぐ横の小さい船に積んでいる様子でしたので、輸入したものを他の国内港に運ぶために積み替えをしている途中だったのかもしれません。
もう一隻は、咲洲南港地区の停泊していた「AMIS GLORY」。
これも調べたところ、今年1月に進水したばかりの省エネタイプの新造船でした。
所有はパナマの船会社、TRIUMPH WISDOMで、全長190メートル、総トン数31,700トン、クレーンを4基を備えた穀類、石炭、鉱石、鋼材などの貨物が積載可能なバラ積み貨物船でした。
残念ながら、作業はしていませんでした。

EVER PEACEコンテナ船も、作業を見ることができたのは2隻。
1隻は夢洲のコンテナ埠頭(C10~12)に停泊する長栄海運(EVERGREEN)の「EVER PEACE」。
全長182メートル、総トン数17,887トン、積載コンテナ1,618TEUという大きさは、最近の大型化が進むコンテナ船の中ではそれほど大きくはないと思いますが、やはり近くに寄るとその大きさがわかります。
ガントリークレーンでの荷役作業中で、クレーンの操縦席が見えるほど近寄ってくれた見学船の方には感謝です。

もう一隻は、咲洲コスモスクエア地区(C8~9))に停泊していた万海航運股分有限公司(WAN HAI)の「WAN HAI 317」。
総トン数27,800トン、積載コンテナ2,646TEUですから、こちらの方が倍近く大きな船ですね。
写真では、コンテナがあまり載っていないように見えますが、これは甲板上の蓋を開け、船倉内にコンテナを入れている途中であるためと思います。
韓進のコンテナコンテナ埠頭は咲洲にもう1つ(C1~4)あります。
南港のコンテナ埠頭としてはそこが最初だそうですが、残念ながら、ここには船は停泊していませんでした。
おそらく、ここは先日経営破たんした韓進海運が使っているところだからだと思います。
他のエリアのコンテナヤードには、コンテナが4段も5段も積み上げられていたのに、韓進のコンテナはせいぜい2段。
今後、この問題はどうなるんだろう?と思わざるをえない侘しい光景でした。

大阪港は来年(2017年)に海港150周年を迎えるそうです。
各種のイベントを計画しているほか、将来の大阪港のあり方として、コンテナ船の大型化(8,000TEU型が主流となる)をにらみ、主要航路の水深を16mにまで掘り下げ、さらに、夢洲のコンテナターミナルでは岸壁の延長工事も実施されているとのことです。
ただ、大阪港は、神戸港や横浜港に比べると一般の人が楽しめる、親しめる港とは言い難いと私には思えます。
今回の見学会は市政モニターですので、そういったところを変えたほうがいいと意見を出しておきました。

ずっと船の屋上にいたので、すっかり日に焼けてしまいましたが、ひじょうに有意義な見学会でした。(I)

AMIS GLORY

ガントリークレーン操縦席

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

WAN HAI 317