8月末に韓国の海運会社、韓進海運の経営破綻は、貿易業界に大きな衝撃を与えました。
韓進の貨物船に積まれた商品が1ヶ月以上経っても荷揚げできない、貨物が届かないなど、混乱はまだ続いているようです。
しかし、海運や港湾関係者の間では、相当前、それこそ数年前から「韓進は経営が危ないのではないか?」との懸念があったようです。
その懸念の根拠が、韓進の経営指標などを見てのものではなく、港に停泊する船の具合を見てとのことですから、現場の人の肌感覚というのは見事というほかありません。

曰く、「船にはコンテナが満載されているのに、喫水が浅い」と思っていたとか。
コンテナ内に貨物が入っていた(実入りコンテナ)であれば、その分重量が重くなります。
満載であれば、相当深く、それこそ満載喫水線近くになるはずですが、喫水が浅いということは、満載に見せかけてその実、空コンテナが多いことを意味します。
また曰く、「コンテナ満載の船が、大した波でもないのに左右に揺れすぎ」と思っていたとか。
荷役の効率から考えて、積み下ろしする必要がある実入りコンテナは上の方に積みますが、動かす必要のない空コンテナは下の方に積みます。空コンテナが多ければ、船全体の重心が高くなって安定性が下がりますので、ちょっとした波にも左右にゆらゆらと揺れることになるわけです。
じゃあ、なぜそうしてまで空コンテナをわざわざ運ぶのかというと、運送する貨物がいっぱいあるように見せることで、荷主がたくさんいる=経営に問題はない、そう思わせるためでしょう。
しかしながら、港の現場ではそんな偽装はすっかり見破られていて、最近は韓進の船は「動くバンプール(空コンテナ置場)」と言われていたそうです。

自社が運送を任せようとする船会社に経営破綻の怖れはないかの判断材料として、実際に運航している船の様子を見るというのは1つの有効な手というわけです。

といっても、一般の輸出者/輸入者の人々が港に行って、船の状態を見ることも、そこから状況をつかむのも容易ではありません。
では、経営が危ない船会社を見分ける方法は財務情報しかないのか、といえばそうでもありません。
継続的に使っている船会社であれば、自社の貨物はここ最近どういった扱いを受けているかを考えると、危険性に気付くヒントがあったりします。

例えば、下のような状況が頻繁になってきた場合です。
・予定(船腹予約)していた船から変わる。
・積替えなしの便で予約していたのに、積替え便にされる。
・当初の到着予定日から遅延して到着する。

B/Lの約款には、船会社は積載船を変更する自由を有するという条項がありますし、到着日を保証せず到着遅延に対しても責任を負わないという条項があります。
なので、荷主としてはこういったことに対して賠償を求めることはできません。(いわゆる免責です。)
しかし、予定していた船が故障したとか、悪天候に巻き込まれたなど、よほどの事情がない限り、通常はこういったトラブルは起こりません。
しかし、経営が厳しい船会社はしばしばこういうトラブルを起こします。
より高い運賃を支払ってくれる「上得意客」を優先させて載せ、運賃の安い荷主の貨物は後回し(後のスペースの空いた船に載せる)ということをしがちになるからです。

また、船積日から予定(指示)された船積日が変わることが頻繁で、その理由が「抜港(当初寄港する予定だった港への寄港を取りやめること)」である場合にも要注意です。
抜港は、天候不良や到着予定港でストライキが発生したときなどに船会社の判断で行われますが、やはりこれも免責対象です。
上記のように、やむを得ない事情での抜港ならば諦めざるをえません。
しかし、予定の寄港地で積み下ろす貨物が少なそうなので、いったん別の港に寄って貨物が増えそうな頃に戻ってくるということありえます。
それなりにある話ではありますが、あまりにも頻繁であれば、「ここって大丈夫かな?」ぐらいには気にした方がいいでしょう。

韓進の件を見るとわかるように、船社倒産というのはトラブルの中でも最大級にやっかいなトラブルです。
輸出者/輸入者も「運送はフォワーダーさんに任せているから関係ない」と軽く考えず、新聞などで運送業界の状況はある程度は気にしておいた方がいいと思います。(I)