商社の仕事を知りたければ

近年、貿易商社には、ウェブサイト上で面白い自社PRを行う企業が増えてきました。
もちろん、企業向けのものウェブサイトは以前からありますが、最近は一般向け、とくに、就活学生向けやキッズ向けのページにかなり力が入っているようです。

「商社」という存在は、毎年就職先の人気ランキングで上位になる企業が多いわりに、就活学生でも「どういう仕事をしているのか」が具体的にイメージしづらい業種です。
店舗で売っている商品で社名を見ることもないですし、基本的にB to BビジネスですからCMや広告を出すこともあまりないので、大手なのに、知らない人は社名も知らないということも珍しくありません。
笑い話ですが、ある学生が有名総合商社に就職の内定をもらい、親にその報告をしたら「どこやそれ!そんなヤクザのフロント企業みたいな名前のトコ、アカン!」と言われたとか。
どこの会社かは伏せますが、知らない人から見ればそんなものかなーと思わせる話です。
PRに力を入れるのは、一般向けの知名度アップ、そして自社の仕事を具体的に知ってもらってどれだけ魅力的なものかを理解してもらうことによって、優秀な学生を獲得することを目的としているわけです。
キッズ向けは、先の長い話かもしれませんけどね。

もちろん、これまでも商社の多くは、ウェブサイトに「事業実績」を掲載していましたし、事業紹介の動画も珍しいコンテンツではなくなっています。
しかし、最近はクイズなどのゲームやアニメーションなんかを取り込むなどの工夫をし、多くの人に自社の仕事を知ってもらおうという意気込みが感じられます。
キッズ向けといってもあなどれず、大人が見ても感心できるほど、その中身は充実しています。

例えば、業界最大手の伊藤忠商事です。
ここは、最近珍しくTVCMを打ち、シリーズで様々な仕事の現場を紹介していますが、ウェブサイトにはCMギャラリーがあります。
いとうチュウ太の大冒険」というコーナーでは、ネズミのキャラクターが商社の仕事を紹介しています。
キッズ向けページではありますが、その分わかりやすいのがいいですね。

会社の歴史から商社の仕事を紐解いていくところもあります。
日商岩井とニチメンが合併してできた双日がそうですが、ここは日商岩井の源流たる、昭和初期まであった超巨大総合商社「鈴木商店」の物語を、マンガで掲載しています。(集英社「栄光なき天才たち」の特別編集版)
鈴木商店の世界を股に欠けたビッグビジネスを示すことで、商社の仕事がいかにダイナミックなのかを感じることができます。
かくいう私も、30年近く前にこのマンガを読んで、鈴木商店に興味を持ち、商社という存在に深く関心を抱いたものです。

物語という意味では、大手商社の手掛けるプロジェクトには、それ単独で小説の題材になるようなものも珍しくありません。
三菱商事は、自社の歴史や自社の取り組んだプロジェクトを物語として紹介しています。
住友物産も、 「広報パーソン 世界探訪記」というコーナーで、いかに同社が世界各地で仕事をしているかを物語的に紹介しています。
なかなか読ませる筆致で、商社の仕事に興味を持てるようになるでしょう。

面白いのは丸紅で、商社の仕事と人々の生活の関係をイメージした、鳥獣戯画をモチーフにしたアニメーションを公開しています。
「となりのトトロ」などでおなじみのスタジオジブリ製作のため、ひじょうにクオリティーが高いものです。
イメージであって、具体的な仕事ではないのが少し残念ではありますが。
また、キッズ向けにオリジナルキャラクターによる人形劇で自社紹介をしています。

こういったものは、普通に生活をしていたらなかなか存在を実感できない「商社の世界」「国際ビジネスの現場」を知るのにとても役立ちます。
他の会社もそれぞれ工夫を凝らしたコンテンツを出していると思いますので、「商社」というもの、その「仕事の中身」を知りたいという方は、ご覧になるとかなり勉強になりますよ。(I)