内変機を使った金密輸の摘発事件

近年、日本では金の密輸(の摘発)が急増しているというのは、以前の記事で述べました。
(2016年1月15日付 「さすが、税関の人はスルドイ!」)
その記事の後にも、いくつもの摘発事例がありましたが、先週報道されたものは「へぇ、よくこんな手口を考えついたものだなぁ!」というものでした。

その手口とは「内変機」を使ったものです。
内変機というのは、国際線で到着した後、今度は国内線として引き続き運航する航空機を言います。
今回の事件を例とすれば、台湾から「国際線」の便で中部国際空港(セントレア空港)に到着した航空機が、今度は「国内線」の便として羽田空港に向けて飛ぶということです。
この逆に、国内線で到着した後、国際線で引き続き運航する航空機は「外変機」と呼ばれます。
内変や外変は、機材繰りや、機材の効率的な運用のために行われます。

ポイントは、内変機であろうと、外変機であろうと、国際線と国内線が切り替わる空港で、人もモノも全て一旦、機外に出さなければならないこということです。
その理由は、出入国審査と通関です。
上記の内変の例で考えてみましょう。
国際線で台湾から到着した人やモノは、中部国際空港で入国審査や輸入通関を受けなければなりません。
しかしもし、いずれも降ろさずに、むしろ、中部国際空港で国内線の旅客や手荷物も積み込んで、羽田空港に運んだとしたらどうなるでしょう?
国内線の旅客や手荷物ですから、羽田空港では審査も通関も受けることはありませんよね。
これだと、外国から日本に無審査で人やモノが入ってくることになってしまいます。
それでは困るので、空港で全てのもの(機内販売用の商品も)を一旦降ろすわけです。
引き続き、羽田空港に行きたい人も、中部国際空港で入国審査と輸入通関などの入国手続きを済ませたうえで、改めて国内線に乗り込むことになります。
これは、外変機の場合でも同じで、出国手続きと輸出通関のために一旦降機しなければなりません。

では、今回の事件ではそれをどうすり抜けようとしたのでしょうか?
報道によると、国際線で日本に来る間に機内のトイレの壁裏に金塊5kgを隠し、中部国際空港で降機、内変後の国内線に別の運搬役が乗り込んで隠した金塊を回収、国内線乗客として通関を受けずに金塊を密輸入しようとしたようです。
しかし、警戒していた税関職員に発見されたようです。
実は、日本の税関では急増する金の密輸に対して、平成29年11月より「「ストップ金密輸」緊急対策」として水際取締りを強化していたところだったのです。

しかし、一旦降機するのに、自分が国際線で乗ってきた機体が内変機となると、どうやってわかるのでしょうか?
航空会社は、こういった手口に利用されないよう、どの機体が内変機、または、外変機になるのかは公開していないと言います。
しかし、マニアな人はいるもので、各機体に振られている機体番号と、航空機の現在地を検索することができるサイト(例:Flightrader24)で法則性を探すことで、わかる人はわかるそうです。
また、航空会社の予約サイトでも、国内線なのに座席クラスの欄に「国際線仕様」と書かれているものがあります。
国内線なのに国際線仕様の座席に座れるということで、知っている人には人気だそうで、全てではありませんが、これらは内変機や外変機である可能性が高いそうです。

今回、少し大きなニュースにはなりましたが、この手口は税関としては初めてはなかったようです。
平成29年10月11日に、長崎税関より日本関税協会 長崎支部宛 「「取締強化期間」への協力依頼について」という文書が出ています。
この中に、金地金の密輸ルートして内変機を利用したものが挙がっています。
税関の人たちはこのように、密輸を見逃さないように手口の研究をし、スルドク見張っているのです。(I)