「廃棄」と「滅却」

前回の「税関は、輸出入者や通関業者を1ミリも信用していない。輸出入者や通関業者は密輸をしよう、関税をちょろまかそうと思っているに違いないと考えている。」と考えるとよいという話のわかりやすい例として、「廃棄と滅却」が挙げられます。

ここは試験で出題されるところとして要注意ポイントなので、まずは言葉の定義からみていきましょう。

  • 廃棄(関税法基本通達34-1(1)、(3))

    外国貨物を滅却し、又は腐敗、変質等により本来の用途に供されなくなった外国貨物をくずとして処分することをいう。(1)

    その廃棄が滅却以外の廃棄であるときは、その廃棄後の現況により輸入手続を要することになるので、留意する。(3)
  • 滅却(関税法基本通達23-9(4))
    焼却等により貨物の形態をとどめなくすることをいう。
    ただし、当該貨物の残存価値がほとんどないと認められる状態(例えば、空ビン、レコード、電子計算機器等の破壊、穴あけ、切断、砕片若しくは圧縮、塗料等への土砂混入又はフィルム、衣類等の細断)にし、かつ取締上支障がないと認められる場合は、「滅却」とみなして扱うこととする。

つまり、廃棄には、「屑ということにする」場合と、「焼却等でメチャメチャにする」場合があるわけです。
ここでポイントとなるのは、その後の通関上の処理です。
まず、「屑ということにする」場合には、税関長に「届出」をすることになり、「廃棄後の現況により輸入手続を要する=関税等が徴収される」ことになります。(関税法第34条)
一方、「メチャメチャにする」場合には、税関長から「承認」を受けた場合には「関税等を徴収されない」扱いになります。(関税法第45条第1項)

まず理解しておくことは「屑も商品となりうる」、つまり、屑には価値があるということです。
屑鉄や廃プラスチックはリサイクルされて再生資源として原材料となることもあります。
ではもし、「廃棄したら、関税を納付しなくてもいい」ということになったらどうなるでしょう?
税関としては「廃棄したという名目で、屑という商品を無税で輸入しようとする輩が出てくるに違いない」と考えるでしょう。
よって、廃棄したものであっても、通常の輸入通関手続き=輸入時の屑の価値で関税を課すことにするわけです。

一方、滅却はメチャメチャにして屑としての価値すら無くすことですから、税関長に承認を受ける=税関長が価値がないと認めた場合には、関税を課すこともしないわけです。
しかしこれは、「税関長の承認を受けずに滅却した場合には、関税が徴収される」ことでもあります。
それは「滅却しました!」と言いながら、実は滅却せずにこっそり持ち込む輩がでるかもしれない、もしくは、表面的に滅却するフリだけして価値が残ったものを持ち込むかもしれない、と税関が考えるからです。

法令で使われている用語を整理し、法令の意図を理解できると、ややこしい部分も理解しやすくなる好例です。