「通常要すると認められる」運賃や保険料 1

年度末になると、次年度の通関手続きのための発表事項が色々出てきます。
その代表的なものが、下の2つです。
(1)保険料が不明な場合の通常要すると認められる保険料の額
(2)運賃特例が適用される場合の通常要すると認められる運賃及び保険料の額

いずれも、4月1日~3月31日までの間に適用されるものとして、その額or算出方法が公示されます。

まず、(1)はなんのためにあるものなのかについて説明しましょう。
輸入申告価格は原則的にはCIF価格、つまり、保険料込みの価格でなければなりません。
しかし、予定保険や包括保険をかけている場合など、輸入(納税)申告時に、時間的な問題で保険料が算出されていないことがあります。
そういうときの、「とりあえずの」保険料の額をアテコミしないと、申告できない=貨物の引き取りができない、という状況になってしまいます。
そのため、関税定率法基本通達4-8(4)ハで「輸入貨物に係る納税申告時に、当該輸入貨物に係る保険料の額が明らかでないことを理由として、輸入者が、輸入申告実績に基づき「通常要すると認められる保険料の額」として税関長が公示する額を当該輸入貨物に係る保険料として申告した場合には、 これを認めても差し支えないこととする。」とされています。

このテーマは通関実務の計算問題で出題されるようなものではありませんが、大事なのは、この公示価格による保険料はあくまでもアテコミ、つまり、仮のものだということです。
なので、同通達で「当該輸入貨物に係る納税申告が行われた後に実際に要した保険料の額が申告額と異なることが明らかになったとき」には、輸入者が「修正申告」をしなければなりませんし、修正申告がなされなければ、税関長が「更正」や「決定」をすることになると定められています。

それは、もし公示された保険料が実際よりも低ければ、ほんとうは正しい保険料の額はわかっているのに、公示価格を使って税金をちょろまかそうという輩が出てくる可能性があるからです。
(やっぱり、税関は輸出者や輸入者を疑ってかかっているんだ、ということがわかります。)

そして、もっと大事なのは、この公示額と実際の額の差額による修正申告や更正・決定があった場合の、付帯税(ペナルティー)の扱いです。
本来の保険料額が不明ゆえに「やむをえず」この公示額を使ったのだから、延滞税や過少申告加算税の免除を受けることができる状況に該当すると思いがちです。
しかし、通達で「関税法第12条第6項(延滞税の免除)に規定する「やむを得ない理由により税額等に誤りがあつたため」に該当しない」、「関税法第12条の2第3項(過少申告加算税)に規定する「正当な理由」に該当しない」と示されています。
つまり、差額の分だけきっちり延滞税や過少申告加算税が課されるわけです。
このあたりにも、ペナルティがなければ「とりあえず公示価格で安めに申告して税額をちょろまかし、事後調査で差額が判明するまで黙っていよう」とする輩がでるだろうと考えてのことだと思われます。

延滞税や過少申告加算税が「課されない場合」を覚える場合のエピソードとして覚えておくといいでしょう。