平成27年度法令改正-関税定率法基本通達-

通関士試験は、通達レベルからも出題されるのがやっかいです。
しかしその一方で、通関実務の科目においては、関税定率法基本通達がひじょうに役立ちます。
課税価格に係る加算要素、控除要素の考え方が、例示込みで多く示されているからです。

平成27年4月改正として、この関税定率法基本通達も改正になっています。
改正といっても、変わったわけではなく、より明確化されただけですのでご安心を。

明確化されたのは、4-8(課税価格に含まれる輸入港までの運賃等)です。
ご存知のとおり、課税価格の算出において、輸入港までの運賃は加算要素ですが、今改正のポイントは、用船契約における追加料金の扱い方です。
「当該船舶が当該用船契約において約定された許容停泊期間を超えて停泊したことにより用船者が船主に対し支払う割増料金」は「運賃に含まれるもの」として加算要素です。
その一方で、「輸入港における滞船料(デマレージ)を除く」とされています。

海上運賃について詳しくない方は「これはなに?両者はなにが違うんだ?」と疑問に思われるかもしれません。
簡単に言えば、荷主(用船者)が船主からを船をチャーターして運んでもらうことを用船契約と言います。
この場合、貨物の船積みに要する期間も定められ、これが許容停泊期間ですが、しかし、荷主が船積作業にもたつくと、この期間を超えてしまうということになります。
そうなると船主としては、次の荷主に船を貸し出して稼動させる期間が減るわけですから、ペナルティとして追加料金を取りますが、これが上記の「割増料金」とか「滞船料」と呼ばれるものです。
上記のうち、前者(割増料金)は加算要素で、後者(滞船料)が控除要素となっていますが、これは単純に、前者は輸出港でのもの、後者は輸入港でのものと考えていただければ結構です。
(これは、税関ホームページの事例集を見ればわかります。)
加算すべき運賃類は「輸入港到着まで」なわけですから、到着後の費用である滞船料が入らないというのは「そりゃそうですよね。」ということです。

ところが、輸入港到着後の扱いとしてこれまで通達で示されていなかったものが、早出料と呼ばれるものです。早出料とは、滞船料とは逆に、船積作業がチャキチャキ終わり、早く出港できるようになったときに、船主から荷主に払われる報奨金(キックバック)です。

早出料は輸入港到着後、荷降作業後に確定することがほとんどである一方、実質的な運賃の値引きですので迷うところでしたが、今般「輸入港までの運賃の計算上考慮しない」と示されました。
この点は、通達で事例が下のように示されていますので、考え方をご覧いただければと思います。
「(注) 輸入港までの運賃(80)に輸入港において滞船料(10)が発生し運賃として 90 を支払う場合又は輸入港までの運賃(80)に輸入港において早出料(10)が発生し運賃として 70 を支払う場合における輸入港までの運賃はいずれも80となる。」

どうです?なんとなく出題されそうじゃないですか?