原則、例外、特例 2

通関士試験の勉強をする方の多くが「これはややこしくて好きじゃない」と言うのが、下の2分野です。

・課税物件の確定の時期、適用法令の日
・法定納期限、納期限

よく聞かれますが、これをスパッっと一気に覚えられる魔法のメソッドはありません。
これらがなぜややこしく思えるのかといえば、まさに「原則」「例外」「特例」が入り混じっているからです。
そのため、シチュエーションを細かく覚えようとすればするほど、混乱してしまいます。
結果、試験でシチュエーションを問題の条件がちょっと細かくなったり、あえて惑わせるような条件が出された場合には、迷いが出てきてしまいます。

多くのテキスト本、講座の教科書では、シチュエーションごとに並べる、つまり「課税物件の確定の時期+適用法令の日」、「法定納期限+納期限」でニコイチにした表形式で説明しています。
こういうニコイチの表形式はビジュアル的になるので、覚えやすいというメリットはあります。
しかし、よく考えれば、この2つ(づつ)は、いずれも関税の納付に関することです。
ニコイチを2つで覚えるよりも、シチュエーションを整理し、4つまとめた表にしたほうが理解しやすかったりします。

また、意外かもしれませんが、シチュエーションを細かく作ったほうが、結果的に覚えやすかったりします。
なぜならば、細かい違いが気になって理由を考えてしまうからです。
なんだかんだ言って、法令というのはロジカルな理由で出来ている部分が多いので、1つの理由の発見は他にも応用できるのです。

例を挙げてみましょう。
「特例」、つまり、特例申告の場合ですが、課税物件の確定の時期と適用法令の日は、輸入申告前に保税地域に入れるか入れないか、で変わります。
保税地域に入れた場合は、特例申告をしない場合と同じになるわけです。
しかし、法定納期限と納期限は、どちらの場合でも変わりません。
作表中にこの分岐を作ると、「あれ、なんで?」ってどうしても疑問を持ってしまいませんか?

まず、課税物件の確定の時期と適用法令の日ですが、すぐに輸入する場合はAEO制度なので、引取申告→輸入許可は時間がかかりませんしから、輸入許可の時・日でいいやということになります。
しかし、保税地域に入れたものについては、ほんとうに特例申告の扱いにするのか確定していません。
一部返送することもあるでしょうし、保税地域内でなんらかの作業を行う可能性、下手をしたら亡失してしまう可能性があります。
なので、輸入申告の前の状態で、課税物件の確定を蔵入承認時などにしておく必要があり、その場合に適用する法令(関税率も法令に含めます)を示しておく必要があります。

一方、法定納期限と納期限については、あくまでも特例申告をした場合にのみ関係するするわけです。
特例申告のプロセスから考えれば、いうまでもなく、特例申告書の提出は輸入許可を受けた後なわけですから、貨物の本邦到着後すぐに輸入許可をもらおうが、保税地域に入れたあとに輸入許可をもらおうが関係がない、よって、区別を付ける必要がないわけですね。
その一方で、保税地域に入れた貨物が亡失した場合は、当然のことながら引取申告も特例申告もできなくなるわけですから、「特例」のルールではなくなります。
「一定の事実が生じた場合」という状況になるわけですね。

こういう風にみれば、表よりもシチュエーションによって分岐させるフローチャートにしたほうがわかりやすいという方もいるかもしれませんね。
いずれの方法でもいいですが、最初に作るときはちょっと大変かもしれません。
しかし、シチュエーションごとの結果を整理しておくことで、法令の「仕組み」そのものを理解できるようになれば、多少ややこしい問題が出てきても考えの拠り所ができるというものです。

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