難破貨物等の運送

関税法第64条により、下のものについては外国貨物のまま運送することができます。

  • 難破貨物
  • 運航の自由を失つた船舶又は航空機に積まれていた貨物
  • 仮に陸揚げされた貨物

これらの規定は、ほとんどの参考書で保税運送のセクションに盛り込まれています。
なので誤解されやすいのですが、上記の3つは「保税運送ではありません」。

保税運送の定義は、関税法第63条にあり、「開港、税関空港、保税地域、税関官署及び他所蔵置許可場所『相互間(特定区間)に限り』」となっています。
よって、出発地がこれらのどれでもない難破貨物等の運送は、「保税運送」ではないわけです。

難破貨物等の運送をしようとする者は「税関長の承認を受けなければならない」ことになっていますが、上記により、この承認は「保税運送の承認」ではなく、あくまでも、「難破貨物等を外国貨物のまま運送することの承認」です。

承認を受けるときには「外国貨物運送申告書」を提出することになっており、この書類は保税運送の承認を受けるときと同じものです。
しかし、難破貨物等の場合には、この書類は「運送承認申請書」と読み替えられることになっています。

上記の「運送承認申請書」には下の事項を記載することとなっています。

  • 運送に使用しようとする船舶、航空機又は車両の名称、登録記号又は種類
  • 運送しようとする貨物の運送先、記号、番号、品名、数量及び価格
  • 運送の期間及び目的

これは、「税関職員がいないため、警察官にあらかじめその旨を届け出て運送する場合」に行う「届出」でも同じです。
(関税法施行令第53条第1項、第54条)

保税運送を行う場合には、運送目録の提出と税関長による確認が必要となります(関税法第63条第3項)が、難破貨物等の場合はこの手順がありません。
しかし、税関としては、難破貨物を装って密輸入されることを防止するため、出発時と到着時の貨物の同一性を確認しなければなりません。
そのため、難破貨物等が運送先に到着したときに、「当該承認又は届出を証する書類」=「(上記事項が記載された)運送承認申請書」を、直ちに到着地の税関に提出させるわけです。

試験で難破貨物について、「保税運送することができる」といった記述があれば「×」になりますし、「運送目録の提出が必要」であるかのような記述があればやはり「×」になりますので、注意しましょう。
同様の理由で関税法第66条の内国貨物の運送も、保税運送とは違う規定ですので注意して下さい。