課税価格の考え方 2(PriceではなくValue)

前回、「そもそも税関は課税価格をどういうものと考えているのか?」理解するとわかりやすくなると述べました。
実はこれは、輸出申告価格についても同様です。

結論から言えば、税関が輸出入申告で知りたがっているものは、「価格(Price)」ではないということです。
税関が知りたがっているのは貨物の「価値(Value)」なのです。
問題は「いつの時点でのValue」なのかということですが、それは下のとおりであることはご存知のことでしょう。

  • 輸入申告:CIFベース、つまり、輸入貨物が日本の輸入港(空港)に到着した時点。
  • 輸出申告:FOBベース、つまり、輸出貨物が日本の輸出港(空港)で本船に積み込まれた時点。

インボイス(税関でいうところの仕入書)価格が申告すべき価格のベースであることは言うまでもありません。
インボイスは請求書の役を持つものですから、通常、そこに記載されている金額は、輸入者から輸出者に支払う金額です。
課税「価格」とか、輸出申告「価格」となっているので、この「輸入者から輸出者に支払う金額」=「取引価格」に目がいってしまいがちです。
しかし、関税定率法第四条で課税価格とすべき金額が「当該輸入取引に関し買手により『売手に対し』又は『売手のために』、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格」とされてることを考えてみて下さい。
※「支払われた又は支払われるべき」とは、簡単に言えば、前者が前払い、後者が後払いと考えればわかりやすいでしょう。

これは、輸入者から輸出者に支払うものだけでなく、輸出者のために支払うのであれば支払先は輸出者以外であっても対象になるということを意味します。
つまり、税関にとっては、その取引について「誰に支払ったかは関係ない。」ということです。

例えば、輸入貨物の取引価格(仕入書価格)がFOB建だったとしましょう。
この場合、課税価格はCIFベースですから、仕入書価格に運賃と保険料を足すことになります。
この運賃、保険料は輸入者から船会社や保険会社に支払われるものですから、輸出者に支払うもの以外が対象になるのだということがおわかりいただけると思います。

上記の時点(CIFやFOB)に至るまでに、その貨物に係った「全て」、それがその貨物の「Value」です。
全てですから、その貨物の製造に係った原材料も加工費用は最初にValueを作りあげた要素として含みますし、その取引を完遂するために必要な支出もその貨物には絶対必要なValueということになります。
運送は「その物品が有るところから、無いところに移動させる」行為によってValueを上昇させていることですし、保険というのは「その物品の運送リスクを低減させる」行為によってValueを上昇させていると考えることができます。
この「貨物のValueを構成しているもの」という観点を理解することが大事なのです。
これを理解できれば、試験問題で、限定列挙要因と記述されているものと違う表現となっていても、解けるようになります。

ちょっと観念的になってわかりにくいかもしれませんので、次回以降、具体的に見ていくことにしましょう。