義務と任意-IATAディプロマの場合

義務と任意の違いは、IATAディプロマ試験でも関係することがあります。

IATAディプロマ試験は、TACTもしくはOAGを参照する試験で、それらは英語で書かれていますし、試験問題も英語です。
なので、この義務と任意の違いは、文中の「助動詞」に現れます。
具体的には、「shall」となっていたら義務、「can」となっていたら任意と解釈されます。
義務を表す助動詞としては「must」がまず頭に浮かぶ方が多いでしょう。
しかし、ビジネス的な文書や法的効力を求める文書などでは、mustはあまり用いられず、shallを使うのが一般的です。

さて、このshallとcanの違いの典型的な例ですが、TACT Rules Section3.7. Class Ratesのところがわかりやすいかと思います。
Class Rates対象品目には、割増(Surcharge)となるものと、割引(Reduction)となるものがあります。
割増/割引運賃のRate(1kgあたりの運賃率)の建て方は、N.RateやQ.Rateの○○%増し/割りという計算をします。
ここでポイントになるのは、割引対象になる品目、例えば、3.7.7.のNEWSPAPERS,MAGAZINES~ や、3.7.8.のBAGGAGE SHIPPED AS CARGOです。

これらの品目については、Rateは○% of Normal GCR(%は100%以下)となっています。
N.Rateの○%とする場合には、その貨物の総重量がいくらになろうと、Rateは変わらないということになります。
しかし、航空貨物運賃には「重量逓減制」、つまり、総重量が大きくなればRateが下がるという原則があります。
そのため、貨物の総重量が大きくなると、Class Ratesで立てたRateよりも、GCRのQ.Rateの方が低くなるという逆転現象が起こるのです。

これについてTACTでは、取扱いを定めていて、「such lower rate(つまり、安いQ.Rate)」を、3.7.7.では「shall apply」、3.7.8.では「can be applied」と示しています。
つまり、前者は「安い方を適用しなければならない(義務)」、後者は「安い方を適用してもよい(任意)」とされているわけです。
ということは、ディプロマ試験で後者に該当する貨物がこのような状況になっている場合には、Class Rateを適用するのか、Q.Rateを適用するのか、答えが2つあるということになります。
実際に、こういう問題は過去(記述式解答の時代)に出題されたことがあり、正答も2つありました。
ただし、どちらかで解答すれば正答扱いされたものと思われます。

この正答が2つある状態、今の4択式になってからは出題されたことはありません。
しかし、選択肢の中に2つ該当するものがある場合に「D. both A and B」という選択肢を用意されることがあるのがIATAディプロマ試験です。
細かいようですが、shallとcanの違いについて認識しておいたほうがいいと思います。