いわゆる「輸出者/輸入者」に対する呼称について、通関手続きの局面ではまた違った呼び方がされます。
違った呼び方というより、より細かく定義されていると言った方がいいでしょう。

関税法などの法令の条文を全文検索していただければ(今はウェブサイトに出ていますので調べやすいですね)わかりますが、単純な「輸出者」とか「輸入者」という記載が意外なほど少ないことに気付きます。
その一方で、輸出/輸入される前と後で呼称が変わることにも気付きます。

基本的には、下のとおりです。
輸出許可を受ける前は「輸出しようとする者」、輸出許可を受けた後は「輸出した者」となります。
輸入許可を受ける前は「輸入しようとする者」、輸入許可を受けた後は「輸入した者」となります。
また、両方について示したい場合は「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者」となります。
(いずれも前に「貨物を」がつきます。)
輸出/輸入の前後で呼称が変わるのは、税関の取り締まりの仕方が変わるからです。

しかし、輸出者、輸入者という呼称が使われないわけではありません。
その場合の使われ方を見ると、登場頻度が高いのは「特定輸出者」、「特例輸入者」といったAEO制度関係ですが、これはステータスとしての用語ですから対象外とします。
それ以外で登場する場面は、輸出/輸入してはならない貨物に係る条文、税関による調査に係る条文などです。
ただ、これらの場合「許可を受ける前/後」いずれの文脈でも使われていますが、なんとなくですが、比較的新しく加わった条文でこの呼称になっているように思われます。
関税三法はツギハギだとよくいわれますが、こういった用例の混在が通関士試験のための勉強をややこしくしているところです。

この用例は、関税定率法でも同じで混在しています。
基本的には関税額算出に係る条文では「輸入しようとする者」、特殊関税に係る条文では「輸出者/輸入者」となっています。
(輸出には関税がかかりませんので「輸出しようとする者」の記述は出てきません。)
ところ、関税定率法ではさらに用語が加わり、これが状況をややこしくします。
関税額算出の勉強をした方ならばわかると思いますが「売手」、「買手」という言葉があるわけです。
これは、商社などの仲介者を通しての輸出入、輸出入手続きを外部委託する場合など、貿易取引の形態には様々なものがあるためです。
よって、関税定率法基本通達では以下のとおり定義されています。

買手:本邦に拠点を有する者であって、当該拠点において実質的に自己の計算と危険負担の下に売手との間で輸入貨物に係る輸入取引をする者。
売手:実質的に自己の計算と危険負担の下に買手との間で輸入貨物に係る輸入取引をする者。
「具体的には、買手及び売手は、自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担する者」となっています。

例えば、あるメーカーが貨物の輸入契約を結び、しかし、貿易手続きについては詳しくないために商社に輸入実務を任せる場合です。
メーカーから依頼を受けて、貨物の輸入手続きを行うのは商社なので、商社は輸入者にはなりますが、「実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする」のは当該メーカーですから、買手は当該メーカーということになるわけです。

通関士試験のための学習には、用語定義をしっかり理解すること大切ですが、こういう輸出者、輸入者のようにあまりにも基本と思われる用語もきっちり理解して下さい。
とくに、「売手/買手」と「輸出者/輸入者」の違いについては、通関実務科目の課税価格の算出問題で重要な要素になることもありますので、要注意です。