郵便通関と一般通関の相違点 その2

前回は、郵便通関と一般通関の「実は同じ点」を取り上げましたが、今回はその逆、相違点を見ていきましょう。

まず、前回述べた第76条、77条以外の部分です。
関連があるものとして、下の2つの項目をリンクさせておく必要があります。

  1. 輸入を許可された貨物とみなすもの(関税法第74条、関税法施行令第64条の2)
    輸入された郵便物は、名宛人に交付されたときに「輸入を許可された貨物」とみなされ、外国貨物 → 内国貨物に切り替わります。
  2. 保税運送の承認を要しないもの(関税法第63条第1項かっこ書き、)
    特定郵便物(信書のみ、および、20万円以下のもの)は、保税運送の承認を要しません。

これらを踏まえて、郵便通関の規定の中心となる関税法第76条、77条については、通関のプロセスをイメージできるようになることが重要です。
一般通関との大きな違いは、そもそも、郵便通関では、差出人(輸出者)、名宛人(輸入者)は通関手続きをしないというところが大きいでしょう。
ですので、日本郵便株式会社(以下、日本郵便)が行うことになり、ある意味、代行していると言えるでしょう。
代行だからといって、一般貨物の通関業者のように、単に代理人というわけではなく、日本郵便はある意味、通関プロセスの主体です。
そのため、条文において、税関に通知したり、税関から通知を受けるのは日本郵便ですし、「郵便物を発送し、又は名宛人に交付しない」という行動の主体も日本郵便です、税関と輸出者/輸入者の間に日本郵便がいったん入るという形になります。
ただ、関税の徴収については、税関長と名宛人は直結します。
関税の課税標準及び税額を通知する相手は名宛人であって日本郵便は「経る」だけの話ですし、納付についても税関に納付するのであって、日本郵便はその委託を受けるだけの話です。
このように、「誰から誰に」という流れをしっかり理解しておいて下さい。

その他の相違点としては、関税法第77条第6~8項(郵便物の関税納付前受取)の規定が特徴的です。
これは、一般貨物の関税法第77条の「輸入の許可前における貨物の引取り」の規定(いわゆるBP承認制度)に類似しているものです。
ただし、BP承認制度では、関税額に相当する担保の提供が義務(絶対的担保)であるのに対して、郵便物の関税納付前受取の規定では、税関長は、「必要があると認めるときは、担保を提供させることができる」と任意的担保になっていることに注意をしなければいけません。
そもそも、名宛人は自分で関税額を計算せず、税関から関税の課税標準及び税額の通知を受ける立場ですから、承認申請をする段階では関税額を知ることができません。
そのため、通知を受ける前でも承認申請をすることができ、その場合の税関長に提出する承認申請書の記載項目は、承認を受けようとする郵便物の「品名」、「数量」、「日本郵便における保管番号」、「当該承認を受けようとする理由」となります。
一方、通知を受けた後に承認申請をする場合には、上記の承認申請書に加えて、「国際郵便物課税通知書」を添付することになります。
ここまで細かい話が出題される可能性は低いと思いますが、知っておけば理解が深まると思います。

もう1つ、一般通関との特徴的な違いを挙げるとすれば、原産地を偽った貨物の取り扱いでしょう。
一般通関は関税法第71条(原産地を偽つた表示等がされている貨物の輸入)、郵便通関は関税法第78条(原産地を偽つた表示等がされている郵便物)と、いずれも輸入が認められない場合として規定されています。
しかし、それが見つかった場合の処理方法に違いがあります。
一般通関では、「税関長は(中略)輸入申告をした者に、直ちに通知し、(中略)、その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は当該貨物を積みもどさせなければならない。 」となっています。
しかし、郵便通関では、税関長が通知する先は日本郵便で、日本郵便が名宛人に問い合わせをすることになります。
また、名宛人がとることができる手段は「表示を消させ、又は訂正させなければならない」でなっています。
(表示を消したり、訂正されなければ、交付されないのはいうまでもありません。)
あって、「積戻し」という選択肢がないことには十分な注意が必要でしょう。

出題されそうな部分のうち、とくに注意しておくべき点は、こういったところだと思います。