第50回通関士試験の結果1

11月25日に第50回(平成28年度)の通関士試験の合格発表がありました。

合格された方、おめでとうございます。
税関より合格証書が送られ、手に取られたことでしょう。
毎年話題になるのですが、通関士試験は各税関ごとの実施ですので、合格証書が税関ごとに違います。
一番豪華なのがの大阪税関(マット紙にカラー刷り)、一番貧相なのが東京税関(普通のコピー用紙にしか見えない)と言われています。
通関士資格は国家資格ですし、これだけ勉強しての合格なのですから、どの税関も大阪税関並みのものにしてくれてもいいと思うのですが。

さて、この合格発表に併せて、試験結果(各種データ)、問題・正答も公開されました。
試験結果を見て思うのは受験者数の減少です。
第47回(平成25年)には11,340人の受験申込者がありましたが、年々下がり続けて、今年はついに10,000人割れの9,285人になっています。
試験の難易度に対してこの資格に魅力を感じる人が減ってきているのではないかと危惧するところです。

一方、実受験者は6,997人となっていますから、約75%で、これはこれまでの割合とあまり変わりません。
ただ、申込者の1/4が受験回避するというのはけっこう多い回避率ではないかと思います。
この原因としては、試験当日までの学習スケジュールにあるのではないかと思います。
受験申込みを7月下旬から8月上旬にかけては、スクールによってはまだ通関実務の半ばというところもあります。
関税法等、通関業法の科目はサクサクとはいかなくても、とりあえず試験までに覚えて答練に慣れていくタイプの問題なので「これなら試験までに間に合いそう」と思えます。
しかし8月に入って、いざ、通関実務の深いところの勉強と最近の過去問に触れるにつれて、「これは、今年の試験には自分のレベルが到達できそうにない。」と諦めてしまったのでしょう。

これが、2回目、3回目の受験であれば、通関士試験のネックは通関実務科目であることは重々承知していますし、自分で答練を積むためのベース知識がありますから、早期にこの科目に着手することができます。
一方、初学の人にとっては、通関実務科目がネックであると聞かされてはいても他の科目と比べての難易度の違いを実感として感じることが難しいでしょう。
また、そもそも通関実務の問題を解くには、関税法や関税定率法の知識が必要ですから、この科目を先行して学習するのが難しいのも事実でしょう。
来年、初めて受験して一発合格を目指す方(皆さん、そのつもりでしょうけれど)は、スクールの学習進度を当てにしすぎることなく、自己学習でなるべく早く通関実務の学習を開始できる状況に持ち込むことが大切だということを、この受験回避率の高さから知っていただきたいものです。
スクールでの授業は自分で学習した内容が理解できているか、理解したつもりでも間違っていないかを確認する場とする、それぐらいの姿勢が一発合格には必要だと肝に銘じておきましょう。
もちろん、2回目以降の方も、通関実務は早めに手をつけておくことが大事であることに変わりはありません。

次に、今回の試験の合格基準についてです。
試験直後から通関実務がひじょうに難しかったという声もありましたが、やはり、通関実務の合格基準点が例年より引き下げられました。

  • 通関業法
    満点の60%以上
  • 関税法等
    満点の60%以上
  • 通関書類の作成要領その他通関手続の実務
    満点の55%以上

なお、ひじょうに珍しいことですが、通関実務の輸入申告書の問題では、答えが2つありうるということで、「2通りの解答を正解とする」と発表されています。
税関からの合格発表の前の、各スクールからの解答速報で間違ったと思っていたのが、この措置で正解になった方もいることでしょう。
「きちんと問題を作れ!」というのではなく、このあたりが、通関業務には解釈が入る余地がある現場の世界を取り扱ったものなんだなあと思わせる次第です。

では、次回は合格率を見ていくことにしましょう。