平成29年4月法令等の変更 -関税法等-

年度当初の法改正で、貿易関連資格の勉強をする人、とくに、通関士試験を受験する人が一番気にするのは、関税定率法等でしょう。
「等」とあるのは、関税定率法だけでなく、関税法、関税暫定措置法など、様々な法令について、一括して発表されているためです。
例年どおり多くの点が改正されていますが、多くは、一部品目の関税率変更や暫定税率等の適用期間の延長など「毎年の更新作業」がほとんどで、各種試験に影響しそうな点は少ないといえます。

あえて出題されそうな点を挙げると、下の関税法の改正点のうち、1点のみではないかと思います。

  • 税関における水際取締りの強化(6月1日施行)
    外国貿易機や特殊船舶等の運航者等に対し、その出港の前に、当該外国貿易機等に係る予約者情報等について、税関長は報告を求めることができることになりました。
    これは、主に「輸出してはならない」などの規定の実施を確保することが目的で、税関長が「必要があると認めるとき」に行うことができる、任意のものです。
    なお、この報告は「原則として電子情報処理組織を使用して報告しなければならないこととする」とされていますので、通関士試験の定番問題であるNACCSで行えることの項目に、これが加わることも意味します。
    また、これに違反した場合の罰則規定も加わり、第114条の2 ~第116条で、懲役や罰金の規定が定められています。

細かい点を言えば、「関税法上の犯則調査手続」(関税法第11章等関係)について、「記録命令付差押えの新設その他の電磁的記録に係る記録媒体に関する証拠収集手続等の規定」が加わっています。
しかしこれは、関税法独自のものではなく、国税犯則調査手続の見直しを踏まえたものですし、税関側の手続きの話なので、問題数がそれほど多くない通関士試験で、あえて出題するかというと、クエスチョン・マークを付けざるを得ないでしょう。

このように「平成29年度4月改正」点として述べてきましたが、実は、通関士試験を受験される方にとって一番関心のあるのは、平成28年度法改正で挙げられていた「輸出入申告官署の自由化及び通関業制度の見直し」に関する規定(関税法第 67条の3及び第 67条の 19等関係、及び、通関業法第9条等関係)についてではないでしょうか。
かなり大きな変更点になるものの、昨年7月1日の時点で施行されていなかったために、試験範囲に入らなかったものです。
この規定は「同法の公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされていましたので、本年度試験の対象に入るのかどうかは、試験対策上ひじょうに気になる点です。
これについては、本年4月7日に「関税定率法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」として施行日が発表されました。
これによると、今年10月8日が施行日となっています。

となると、例年通りであれば、7月1日時点では施行されていませんので、通関士試験の試験範囲にはならないということになります。
ところが、昨年の通関士試験の合格発表の際に、税関からは「次回(第51回)通関士試験については、輸出入申告官署の自由化及び通関業制度の見直しが反映された条文を出題範囲とする予定です」と発表されています。
「予定」であって「確定」ではなく、この後に「出題範囲については、次回(第51回)通関士試験受験案内及び公告にて正式にお知らせします」と続いてはいます。
しかし、試験合格者が活躍する(仕事をする)時期には、改正後の状況になっているわけですから、旧条文で理解していても意味はありません。
よって、本年度試験では特例として、この部分については7月1日には施行されていなくても、出題範囲とされるものと考えていたほうがいいと思います。
私が見たテキスト本では、改正後の記述になっていましたので、テキスト本出版各社やスクールもそう判断しているものと思われます。
通関制度、通関業制度にとって、大きな改正点ですので、ここは狙われる可能性が高いものとして、変更点をきっちり押さえておいて下さい。