2017年11月 比叡山登山(坂本~延暦寺~修学院)

無動寺坂コース入口紅葉のシーズンである11月初めの三連休、天気がいいこともあり、比叡山への単独登山を。
比叡山といえば、世界遺産の延暦寺があり、バスやケーブルを使えば簡単に登れる。
「生きている」実感が欲しいなら、一歩一歩地面を踏みしめて麓から登っていくのが最適だ。

登山ルートも様々あるが、今回は滋賀県・坂本側から、無動寺谷を巻いて登る無動寺坂コースを選ぶ。
比叡山は大比叡山頂でも848.3mとそれほど高くない山であるが、スタート地点も約200mなので、高低差もそれほどあるわけではない。
しかし、前日にすぐ近くの武奈ヶ岳で遭難事故があったばかりなので、要注意。
決して山を舐めず、頑丈な登山シューズ、雨具、スティック(杖)、非常食(行動食と呼ぶ)をしっかり準備する。

10:00 コース入口からスタート。
最近、このルートはマイナーらしく、前にも後ろにも人がおらず、また、降りて来る人とすれ違うこともなく、完全に独りの道行き。
それはそれで、色んなことを黙考しながら歩くことができるというのは悪くはない。
(非常時のことを考えたら、あまりお勧めはできないが)
上がって、しかし谷まで下がって、また上がってするが、道は悪くなく、途中の琵琶湖方面への展望が開けたところで景色を眺めた以外はほとんど休憩らしい休憩なしにスタスタと。

11:00 延暦寺中枢部への入口である無動寺に到着。
ここからは琵琶湖方面の眺望がすばらしい。
明王堂で般若心経を唱える。

11:30 延暦寺中枢部、東塔エリアに到着。
登山道では誰もすれ違わなかったのに、ここは大勢の観光客でにぎわっている。
私が延暦寺に来るのは、冬場が多く、そのときはそれほど観光客はいないので、紅葉シーズンというのもあるが、ここまでの混雑風景は初めて見た。
驚いたのが御朱印授与所の大行列で、ブームだとは聞いていたがここまでとは!

延暦寺で一番人気はやはり国宝である根本中堂。
現在改築中ではあるが、これまで通り中に入ることはできる。

この根本中堂は、延暦寺の中心となるところで、伝教大師最澄が最初に建てた一乗止観院がその前身となる。
信長の延暦寺焼討で灰燼に帰したものの、江戸時代に再建された。
再建時には10万石以上の大名が柱の寄進を許され、76本のその柱は各大名が領国から運んできたもの。
また、中陣の天井には格子の中に花が描かれているが、これも各大名がお抱えの絵師に領国に咲く花を「枯れない花」として描かせて寄進したもので、200枚ある。

内陣の仏様は釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来の三尊。
根本中堂の仏様が、他のお寺と違うところが、我々が参拝する内陣と仏様が同じ高さにあるという点。
(普通は仏様の方が高い位置にある)
ただし、その間には、光が当たらない深い掘り込みがある。
これには意味があり、「我々の現世と仏様の世界は同じ高さにある。しかし、仏様の世界に至るには、暗くて深い煩悩の谷を越えなければいけない」ということ。

また、この根本中堂には伝教大師が灯して、それ以来消えていない「不滅の法灯」がある。
信長の焼討時にも僧侶が持って逃げたために絶えていないそうだ。
延暦寺のお坊さんが言うことには、もし、この法灯が絶えるとなると、その原因は気が緩んでうっかり油を切らせてしまう、つまり「油断」してしまうことだ。
つまり、この不滅の法灯にとっては「油断大敵」なわけである。
と、ウンチクをしみじみとかみしめながら、やはりここでも般若心経を唱える。

延暦寺の宿泊施設である延暦寺会館の喫茶室では、守り本尊の梵字を描いたラテ・アートを始めたという。
飲んでみたかった(写真に撮ってみたかった)が、大混雑だったので、また次回ということで。

13:00 帰路として、京都・修学院方面に抜ける道に足を向ける。
延暦寺があるのは比叡山中であって、山頂ではないので、山頂に至るにはまだ歩く必要がある。

13:20 山頂付近の開けたところに到着。
京都側の景色がパノラマのように広がる場所で、ここでお弁当を広げている人も多かった。
無動寺坂方面では全く見なかった登山者が、ここには何人もいたので、おそらく京都側から登ってくる人の方が多いのだろう。
京都側には色んなルートがあり、道も各所で分岐しているのだが、「京都一周トレイル」のコースとして道標が懇切丁寧に案内してくれるので安心度は高い。

ただ、修学院に抜けるルートは鬱蒼と木が生い茂っているので、景色を楽しみながらという感じではない。
また、雨のせいでか道がV字型に切れ込んでいたり、倒木が横たわっていたりと、行きに比べて整備度が低いのが難点か。
それでも、時々、開けたところからは京都市街が一望できる。

14:30 修学院側の入口、雲母橋に出る。
ここまでくれば住宅地が目の前。
看板によると、このルートこそ、延暦寺の僧兵が強訴と称して京都に出るときに使った道であり、延暦寺を経て滋賀側に出る要所として、戦場にもなったルートだそうだ。
やはり、1200年の歴史を持つ延暦寺、登山者が行きかう道ですら尋常ではない。

全行程、歩行時間は約3時間。
傾斜もそれほどきつくなく、道もそう悪くはない比叡山、手軽な登山先としておススメである。