北アルプス・唐松岳へ(その1)
この週末は、北アルプス・唐松岳に登頂してきた。
唐松岳は後立山連峰に属する日本三百名山、新日本百名山の1つで、標高2,695.9mの山。
北隣りに白馬三山、南隣りに五竜岳と名山に挟まれ、これらをつなぐ上級者向け縦走路の途中でもある。
もちろん上級者ではない私は、北アルプスの入門コースと言われている八方尾根からのルート、また、山小屋泊まりで山頂を目指した。
唐松岳は、朝イチから登頂開始すれば日帰りもできる山(登山ガイド本にもそう書かれている)で、実際、そうしている人も大勢いたが、今回はあえての小屋泊まり。
後にそれが幸いすることになる。
【1日目】
スタート地点の八方の町(9:00出発)からは、白馬三山が望めるが上の方には8月であるにも関わらず雪渓が残っているのが見え、これからの道行きでの「北アルプスさ」を期待させる。
八方尾根のルートが入門コースと言われているのは、ゴンドラとリフトを乗り継いで標高1,850m地点まで上がることができ、さらに標高2,080m地点にある第三ケルン(道標として石を積み上げた塔)付近の八方池までは木道が敷かれ、スニーカーでも歩けるハイキングコースとなっているためだ。
ここは高山植物での有名で、ニッコウキスゲ、タカネマツムシソウ、ハッポウワレモコウなど色とりどりの高山植物が咲いている道を、その後の本格登山までのアップとして歩き、わずかに残った雪渓を渡って八方池には10:30着。
八方池には条件がよければ水面に白馬三山が映るのだが、このときは山に雲がかかっていて果たせなかった。
ここでふと考えたのだが、この地点で2,050mあるということは、西日本最高峰である石鎚山の1,982mよりも高いことになる。
ハイキングコースでこれとはやっぱりアルプスってスゲー!と感心してしまった。
さて、ここから先は本格的な山道ということで、道標にも登山装備がない人はこの先に進まないようにと出ている。
実際、それほど危険な箇所はないものの、石がゴロゴロしているので登山靴でないと無理。
森林限界が近いので日を遮ってくれる高い木がどんどん減っていき、高度を稼いでもまだ暑くなってきたが、まだそこかしこに残る雪渓のせいか、時折、ひんやりした風が吹いてきて心地よい。
高度が上がるにつれて植生も変わってきて、今度はチングルマやバイケイソウ、さらには、ハイマツなどが増えてくる。
12:00頃、道中で一番大きい雪渓である扇大雪渓(約2,300m地点)前で昼食をとり、最後のケルンである丸山ケルン(2,430m地点)に到達すると稜線に出る。
あいにく雲がかかっており、遠望できるほどの景色はないが、見通しが良い稜線歩きはやっぱり気持ちがいい。
もっとも、道の左右どちらも高度感のある斜面なので気を抜いて歩くことはできないのだが。
唐松岳山頂すぐ下の稜線上にある唐松岳頂上山荘に到着したのは14:00頃。
すぐさま宿泊の手続きをしたのだが、当日は梅雨がやっと明けた直後の週末とあって大混雑。
部屋は約4畳のスペースに10名を押し込み(つまり、1人あたり横になれるスペースだけ)、さらに部屋に入りきれない人のために廊下にまで布団が敷かれているという状況。
山小屋は基本、宿泊を断らないので(追い出して遭難されたら一大事だし)、ハイシーズンにはこういうことが起こりうるのだ。
まあ、山の上では雨風を遮る屋根壁があり、食事や水が確保できるだけでありがたいというものだ。
(さらに、山上で温かいコーヒーを飲むことができるのは至福。)
なお、肝心の唐松岳山頂はここから15分程度のところだが、まわりに雲がかかっており、景色があまり期待できなさそうなので明日に期待ということで、完全登頂はペンディング。
夕食は18:30からということなので、それまでは周囲の散策をしながら時間を潰すことになる。
近くには高山植物の女王と呼ばれるコマクサの群生地がありそこをぶらついたり、他の宿泊者と登山談義に花を咲かせたり。
西方向が立山連峰なので「剱岳や立山が見えてこないかなー」と、ぼーっと雲が増えたり減ったり、日が出たり陰ったりするのを眺めたり。
そうやって、なにもない時間を過ごしていると、山小屋の向こう側にいる人達がやたら東方向の谷側に手を振っているのが見えた。
なんだ?と思って見に行くと、なんとブロッケン現象が起きていた!
ブロッケン現象とは、雲に自分の影が映り、さらにその陰があたかも後光のように虹が囲む現象。
自分を挟んで片方から強い日光が、逆側には厚い雲や霧尾が出ているという状況で起こる光学現象だそうだ。
かなり珍しい現象なので、山に登って何年というベテランでも見たこないという人もおり、体験した人は幸せになれると言われることもある。
また、夕刻の日没直前には夕日が雲の反射して金色になる時間「ゴールデン・タイム」を経験することもできた。
これも、夕日の方角、雲の形、湿度など色んな状況が重ならないと現れないものらしい。
そんなレアな体験を二つも登山経験が浅い私ができるとは!と大感激。
急いでピストンするんじゃなくて、山小屋泊まりを選択して良かった。
ただ、雲のせいでまだ山々を綺麗に見ることができていない。
これは明日に期待するしかない!ということで1日目は就寝・・・