ドイツ最高峰へ

昨年書きそこねた活動記録。
 
欧州では新型コロナウイルスが大騒ぎなる直前(イタリアでは騒ぎになっていたが)の2020年2月、ドイツとオーストリアに出張した。
ドイツではミュンヘンが目的地。
スケジュールの空き日に何をしようかとガイドブックを見ていると、列車で1時間半程の町からドイツ最高峰に登ることができるとあるので、「じゃあそこに登りに行くか!」と決めた。
 
ドイツアルプスにあるその山は標高2,962mのツークシュピッツェ。
山頂部分はドイツとオーストリアの国境になる。
2,962mということは「ドイツ最高峰」、「アルプス」とはいっても富士山よりは断然低いんであって、なるほどドイツが平原国であることがよくわかる。
 
ミュンヘン駅から悪名高いドイツ国鉄(DB)のデタラメぶりに苦労しながら、山麓の町ガルミッシュ・パルテンキルヒェン(標高705m)に到着。
1936年に冬季オリンピックが開催された場所だそうだが、暖冬だったのか町に雪はほとんどなし。
しかし、晴天の空の下、町から見えるドイツアルプスの峰々は雪で真っ白で、これからの登山に期待を抱かせる。
ここからは登山鉄道に乗り換えるのだが、沿線にはスキー場をはじめとしたウィンターリゾートのスポットが多いようで、列車の外側にはスキー板を架けるラックがあったり、大きな木のソリ(イマドキ!)を持ち込む家族連れがいたり。
 
アイプ湖畔にあるアイプゼー駅(標高1,008m)では多くの人が降りていったが、ここからは山間部に入っていくため、列車が進んで標高が上がるにつれて雪も深くなっていく。
おや?この登山鉄道はどこまで登っていくの?というと、なんとこの登山列車を使えば、標高2,588mのツークシュピッツプラット駅まで一気に上がってくれるのだ。
ただ、標高1,650mから上はずっと山の中に穿たれたトンネルの中なので景色も全然見えなかったりする。
(トンネルのちょうど中間点に鎮座する聖人サンタ・バーバラ像が唯一の見どころか?)
終着駅の外はスキー場になっていて、ここから超ロングコースで滑走できるらしい。
 
しかし終着駅でもまだ2,588m。
山頂まではまだ標高差400mほどあるが、それはどうするか?
実はここから山頂まではロープウェイが。
つまり、登山といいながら少しも登らなくてよいドイツ最高峰、それがツークシュピッツェなのだ。
しかしさすがに標高差2,000m以上を登山鉄道とロープウェイで一気に上がるとそのツケがくる。
高山病のような感じで頭が微妙に重い違和感が生じたが、真冬、かつ、山頂ゆえに風が乗り越えるので空気が冷たいのが幸いしてその違和感を中和。
 
山頂部分には手すり付きのデッキがあるので滑落の心配もなく、ぬくぬくと暖房の効いた大きなレストハウスもあるので、それなりに厚着さえしていれば登山装備など全くなくても大丈夫!
ただ、この山は岩峰なので真の山頂部分(金色の十字架が立てられている)は冬季は立入禁止。
残念だったのが、ロープウェイの中間ぐらいから雲の中に入ってしまい、山頂では風景が一切見えなくなっていたこと。
ガイドブックによると、晴天であればドイツアルプスの大展望が望めるはずなのだが・・・。
せめて山頂についた思い出を作ろうと、山頂デッキをぷらぷらと歩き、国境を越えてオーストリア側からのロープウェイ駅を見に行ったり。
言うまでもなくドイツもオーストリアもEU加盟国なので、国境だからといって監視所もゲートもなく標柱があるのみ。
なるほどね。
 
丁度お昼どきだったので、レストハウスで昼食。
バイエルンとオーストリアの国境にあるこの山にちなみ、つまり、ハプスブルグ帝国フランツ・ヨーゼフ1世とエリーザベト皇后の逸話にちなみ、カイザー・シュマーレン(オーストリア風パンケーキ)を注文。
しかしこれがまあ量が多いこと、多いこと。
料理人さんには申し訳ないことながら、完食は叶わなかった。
 
レストハウスで小一時間ほど雲が晴れるのを待ったのだが、いっこうに状況が変わらないので、諦めてお土産(山Tシャツ)を買って下山。
同じ経路で戻るのはつまらないので、今度はアイプ湖畔まで一気に降りるロープウェイを使う。
こっちだと景色はよく見えるが、上りに使っていたら本物の高山病になってしまったかも?
雲の下に出ると景気が広がった、というか1/3ほど下った頃に、あれほど分厚かった山頂の雲が晴れてきて「なんでやねん!」とツッコミを入れたくなった。
ほんと、山の天気だけはしょうがないね。
 
まあでもこれで私も「ヨーロッパ・アルピニスト」になれたわけだ(笑)
気軽にヨーロッパの屋根を体験できる(スキーができる人なら更に楽しめる)ドイツ最高峰ツークシュピッツェ、オススメです。
 

ガルミッシュ・パルテンキルヒェンからこれから向かう山を望む。

登山鉄道。ヘッドマークにはバイエルンの紋章。

登山鉄道終点からの風景。ここまではまだ青空が見えるが、雲が上がってきているのがわかる。

山頂付近から。後ろの金色の十字架が真の山頂。

チロル側つまりオーストリア側に降りるロープウェーの駅。ここからオーストリアであると示す看板が。

ここからバイエルン側、つまり、ドイツ側であることを示す看板。

山頂のレストハウスにて。プレッツェルとボウルに一杯のカイザー・シュマーレン。

山裾からツークシュピッツェ。下りたら晴れてる・・・