「ヤマノススメ」の舞台へ

私が山登りを趣味にするようになったのは、登山をテーマにしたマンガ「ヤマノススメ」(作:しろ。既刊21巻)に感化されたというところが大きい。
既に3期アニメ化され、来年には第4期が放送予定。
アニメはラトビアやメキシコでも吹替版が放送されている。
 
登山をテーマにした漫画には山岳救助を題材とした「岳」(作:石塚真一)や、エベレスト登頂に挑む「神々の山嶺」(作:夢枕 獏, 作画:谷口 ジロー)といった、ハードに山に挑むというものがあるが、「ヤマノススメ」はその真逆に、女子高生が実在するいろんな山に登って楽しむというゆるふわなアウトドア漫画。
とはいっても、高山病や吹雪で途中撤退したり、悪天候の中つらい登山を経験したり、登山は楽しい時だけではないことも描いている。
また、登山道具は揃えると高いし、山行にはお金がかかるので、そのやりくりに苦労するのもリアルといえばリアル。
 
この主人公たちが住んでいるという設定になっているのが、埼玉県・飯能市で、インドア趣味の主人公が、もうひとりの主人公でアウトドア派の幼馴染に最初に連れていかれる、その後も物語の要所々々で登場するのが市内にある天覧山(標高197m)だ。
なので、天覧山を含めた飯能市各所はこの作品の「聖地」ということになっていて、私も出張ついでに登ってきた。
西武池袋線・飯能駅から天覧山にはバスで向かったのだが、乗車したのはラッキーなことにヤマノススメ・ラッピングバス。
飯能市は公共交通機関を含めて、この作品で町おこしをしている。
バスに乗ることわずか7分(結局歩ける程度の距離だった)で、登山口下に到着。
 
低山ゆえにルートはいくつもあるが、物語中で登ったルートを当然選ぶ。
登るとはいうものの、山頂まではゆっくり行ってもわずか10分。
中腹にあるちょっとした広場の四阿にはファンによる登山記録ノート(むしろ「巡礼ノート」と呼ぶべき?)が何冊も。
ほっこりしながら、岩場で少し険しい山頂までの道をとる。
実はこの天覧山はけっこう由緒のある山で、5代将軍徳川綱吉の病気平癒のお礼に、生母・桂昌院が奉納した十六羅漢の石仏があったり、そもそも山の名前は明治天皇がここから演習を統監した(天覧した)ことに由来する。
十六羅漢や行幸記念碑を見ながら、汗をかくこともなく着いた山頂には展望台が設けられており、夕暮前の飯能市街がよく見えた。
天気が良ければ富士山まで見えるそうだが、その方向に樹木がかかっていて見えなかったのが残念。
本当はそこから足を延ばして、これも物語中で登っている多峯主山まで縦走したかったが、実は今回は仕事帰りで靴はスニーカーに毛が生えた程度のものだし、ウェアもそれ用ではないので、今回は天覧山だけで下山。
 
帰りは、駅まで歩いていく。
これも物語中やエンディングに登場するので聖地ということになっている飯能河原や観音寺、主人公がアルバイトをしている店があるという設定の飯能銀座商店街を通る。
漫画ではかなり栄えているように描かれていたのに、実際にはシャッター通りなのが物悲しい。
いくら平日夕方でも人通りがぜんぜんないのはなんだかね。
 
この商店街もそうだが、飯能市には登場人物のパネルが置かれている店や、第4期告知ポスターを貼っている店もいくつかあり、この漫画・アニメによる町おこしを期待しているのはよくわかる。
実際、放映中にイベントをやればそれなりの訪問者があるんだろう。
しかし、ラッピングバスやパネルじゃ長期に渡ってのリピーターはつかないし、イベントは一過性のもの。
継続的に訪問者がお金を落としてくれるようになるには、もうちょっと工夫が必要になるだろうね。
ラッピングバスで天覧山へ!

ラッピングバスで天覧山へ!

 

 

 

 

 

 

 

中腹の四阿に置かれた巡礼ノート。

天覧山中腹の四阿に置かれた巡礼ノート。

十六羅漢の岩場。実は信仰の山。

十六羅漢の岩場。実は信仰の山。

山頂に到着!

山頂に到着!

ここも聖地の観音寺鐘楼。梵鐘の代わりに象の像。

ここも聖地の観音寺鐘楼。梵鐘の代わりに象の像。

飯能銀座商店街のお店に置かれていたパネル(主人公のあおい)

飯能銀座商店街のお店に置かれていたパネル(主人公のあおい)

飯能エキナカにある登山ショップ(!)に置かれいたパネル(主人公のひなた)。

飯能エキナカにある登山ショップ(!)に置かれていたパネル(主人公のひなた)。