展覧会「エドワード・ゴーリーを巡る旅」

奈良県立美術館で開催されている「エドワード・ゴーリーを巡る旅」に行ってきた。
ゴーリーはかなり癖がある米国の絵本作家。
その怪しさと妖しさのある物語と細い線で緻密に描く作風で、カルトとも言ってよい人気がある。
子供が主人公の作品が多いが、ありきたりのハッピーエンドにならず、不幸や理不尽は大人だけでなく、子供にも等しくふりかかるので、好き嫌いが分かれると思う。
しかし、柴田元幸氏による美しく韻を踏んだ日本語訳が軽妙で、不幸の中にもコミカルさやシニカルさがあるのも事実。
私はそのダークな雰囲気がけっこう好きで、10年近く前に伊丹で展覧会が開催されたときにも行ったぐらい。
 
そういう作家なので会場はそれほど混んでおらず、けっこうゆっくりと見ることができた。
絵本の原画が中心となるのだが、それぞれの絵がどういう場面なのかの解説がない。
私は読んだことのあるので、だいたいどういった場面なのかがわかったが、初めての人にとってはチンプンカンプンだったのではないだろうか。
まあ、そういう人はこの展覧会には来ないからいいのか。
なお、会場終盤の休憩コーナーには、ゴーリーの主要な絵本が読めるように並べられていたので、後で確認することはできたのだけれど。
 
困ったのが、ゴーリーは絵本の完成サイズのままで原画を描くので、小さい作品が多いこと。
一辺10~15cmぐらいしかないものも珍しくないが、それがガラスケースの向こうに展示されているので、細かいところが見にくい。
原画は原画として、拡大したものを並べて見せてくれればよりよいものを。
 
今回、へぇーと思ったのは、関連展示としてコーナーが設けられていた、ゴーリーと日本文化との関わり。
戦後の米国での日本文化への関心の高まりの中にいたゴーリーが、いかに日本文化の影響を受けたのかというもの。
そもそも源氏物語が大好きだったらしく、10回近くを読んだ(もちろん翻訳版だが)とのことだが、飼い猫の名前も源氏物語からとっていたというのには驚いた。
また、日本画で空白(なにも描かれていない空間)が「間」を表す点を取り込んだとのことで、なるほど、それがあの独特の雰囲気を醸し出しているんだなと。
 
奈良にしては珍しい展覧会で、音声ガイドもなかったが、十分に楽しめた。

看板となっている絵は「ジャンブリーズ」

看板となっている絵は「ジャンブリーズ」

会場入り口では「不幸な子供」がお出迎え

会場入り口では「不幸な子供」がお出迎え

チラシとチケット

代表作 うろんな客の1場面

代表作 うろんな客の1場面

一番有名なのはこれかな?

一番有名なのはこれかな?