30年以上ぶりの香港旅行 3日目
香港3日目。
前日は香港島を徘徊したので、この日は九龍半島に行くことにした。
まあでもとりあえずは朝食ということで、湾仔の宿近くになった地元の米線専門チェーン「南記粉麺」に。
春巻入りの麵とあったので頼んだら、おなじみのあれじゃなく魚肉の練り物。
ムズカシイヨ!
まず向かったのは、九龍寨城公園。
かつて、魔窟といわれた九龍城砦が取り壊された後に整備された公園。
30年前にはまだあったが、危険地帯扱いされていたので、もちろん足を踏み入れていないどころか、近くにも行かなかった。
2.6~2.7万平米(甲子園球場の2/3の広さ)の土地に5万人もの人が住んでいたカオスな集合建築群だった九龍城砦。
この今はもうない九龍城砦は、今でも映画やドラマ、ゲーム、漫画、アニメなど様々なコンテンツに登場することからわかるように、私を含め多くの人に恐れとともに憧れというかロマンを感じさせるもののようだ。
この展覧館にも見学者が大勢で、公園前には大型の観光バスが何台も停車しているほど。
そこもいまやグラウンドや子供向けの自転車練習コース、そして、中国風庭園などがある香港市民の憩いの場だが、その一角にかつての様子を紹介する展覧館がある。
まず目に入るのは、最終期頃の建築群のジオラマ、また、それ以前の城砦であった頃の南門の土台部分(取り壊し時に発掘されたそうだ)が、よくガイドブックの写真で取り上げられている場所。
しかしこの展覧館の真骨頂は、かつての生活風景を実物大ジオラマ的に再現した部屋を紹介するエリア。
展覧館自体は入館料無料なのだが、再現エリアはなんといっても狭いので15分ごとの入れ替え制になっている。
食料品店、飲食店厨房、歯医者、美容室などがあるが、よくこんな狭いところで生活していたもんだな、と。
カオス(もちろん不衛生だった)な九龍城砦の住宅と、そこから見える発展と繁栄していく香港中心部、住んでいた人はお互いにどういう気持ちだったんだろう?
次に訪れたのが、九龍寨城公園から歩いて行ける格仔山(チェッカーボード・ヒル)。
ここは今の空港になる前の国際空港、啓徳空港に関係する遺構。
航空マニアしか興味がないであろう、下手したら香港の人ですらこういう場所があることを知らない可能性があるスポット。
詳細は別のところに書いたので、興味のある方はどうぞ。
「貿易よもやま話:格仔山(チェッカーボード・ヒル)(貿易の歴史散歩)」
午後は香港の人々の生活の場、ショッピングをしている場を歩いてみようと考えた。
油麻地や旺角といったネイザン・ロードもいいのだが、あのあたりは日本で言えば銀座とか表参道のようなもので、生活の場というには少し違う。
事前に調べたところ、九龍半島の外縁部、新界の太和にある富善街街市がよさそうというところに行ってみようと。
(なぜここなのかは別の機会に)
1847年創建の香港で最も古く、かつ、崇拝されている寺院、文武二帝廟を中心にした、地元の人でごった返すとても活気のある商店街。
野菜や魚介類が並び、店頭で大きな包丁で肉を切っているという光景はまさに生活感そのもの。
これまであまり感じなかった「いかにも香港!」といった香り(香菜?)もする。
もちろん、生鮮品を日本に持ち帰ることはできないので、見回ることしかできないのだが、それはそれで面白い。
なお、この富善街街市のすぐ近くには「香港鐵路博物館」がある。
あまり広くはないが、香港における鉄道の歴史を学べるところで入場無料。
実物大の列車があり客車には入ることができるので、鉄道好きにはたまらないところかもしれない。
すぐそばを流れる林村河には屋根付きの橋(MTR太和駅から富善街へのルートになる)が架かっており、そこではおそらくフィリピンとインドネシアの人々がけっこうおおぜい寛いでいた。
聞けば、香港にはフィリピンとインドネシアから来た「お手伝いさん」というか「家政婦」が大勢いるのだそう。
香港人(および駐在員)の子供の世話をするために雇われれているのだが、別にお金持ちだけが雇っているのではなく、一般家庭でも夫婦共働きの子持ち家族であれば必須の存在。
香港では、12歳以下の子供を1人にすることは法律で禁止されているため、共働きしようとするならば、祖父母などの親族に居てもらうか、家政婦を雇わなければならないため。
週休1日制だけれども、あまり高給ではないため、休日(日曜が多い)には公園や広場などで同郷人と集まって寛ぐことが多いとのこと。
これは前日に夕食を共にした香港在住が長い方に聞いた話。
どうりで、前日(土曜)の香港島の臨海公園みたいなところでも、簡易テントを立てて寛いでいる東南アジア人っぽい人が多かったわけだ。
あちこち歩いていると、あっという間に夕方近く。
いかに南にある香港といえど、12月にもなれば日が落ちるのも早い(予想以上に早かった)ので、尖沙咀までで出て、(あえてMTRではなく)九龍半島と香港島を結ぶフェリーであるスターフェリーで湾仔まで戻ることにした。
フェリーもオクトパスカードで乗船できる。
もちろん目的は海から見る香港の夜景。
ビクトリアピークからのように上から見るのもいいのだろうが、船が進むにしたがって半島側からは遠ざかる、島側には近寄っていくビルやネオンの灯りを見るのも面白い。
港からも街の灯りを楽しみながら宿に向かったのであった。
ちなみに夕食は鶏肉の炊込みご飯と、「そういえば点心っぽいもの食べてなかったな」と叉焼まん。
考えたら、香港到着以来、炭水化物とタンパク質ばかりで野菜なんかのビタミンをちっとも摂ってない。
香港では気を付けないとほんとうにビタミン不足になるそうで、まさにそれを実感したのであった。
<4日目に続く>

九龍寨城公園展覧館の入口

南門の土台と南門と書かれた標識(の残骸)

かつての集合建築群のジオラマ

代表的な店舗の復元(実物大模型といってもいい)

富善街街市の商店街。

太保駅の隣は、先月の高層マンション火災の現場の最寄駅。 ホームから現場の(鎮火済ではあるものの)生々しい様子が見て取れた。

夜のスターフェリーより、九龍半島方面。

