「Global」か「International」か

以前お話した某商社の人事の方が、「”Global”と”International”は違う」とおっしゃっていました。
世界を相手にしたビジネスで、なんでもかんでも「Global」という言葉を使ってしまう風潮への疑問のようなものでしょうか。
とくに簡単に「Global人材」という言葉を使うことに違和感を感じておられてようです。

たしかに日本では”Global”と”International”が同じような意味として使われていますが、この2つはかなり違います。
まず、”Global”は「Globe(地球)」から来る言葉ですから、地球規模、つまり、国境を考えない見方です。
一方、”International”は「Inter(間に)」+「Nation(国民)」から来る言葉ですから、国をまたぐこと、つまり、国境があることが前提です。

では、貿易の世界は”Global”と”International”のどちらでしょうか?
私はどちらもだと思います。

最近よく言われる「Globalビジネス」というのは、地球規模でビジネスを行うという意味です。
例えば、調達先(輸入元)や販売先(輸出先)を考えるにおいて、「まず、対象国ありき」ではなく、「世界中どこでも、最適・最善のところ」からセレクトするという志向です。
いわゆる三国間貿易がそうであるように、自国を通過しない商取引をコントロールする場面も増えてきていますし、物流面でも、単純な2地点間の移動だけではなく、全世界をターゲットに入れた物流拠点の設置やITを用いた管理など、国にこだわらない、国境を意識しないビジネスが重要になってきています。
人材面でも、能力や適正面で適材適所であることをより重視し、国籍を考慮する割合を低くして、全世界で人員配置をするのもそのひとつでしょう。

こう見ると、貿易ビジネスは「Global」な世界なんだと思ってしまうかもしれません。
しかし、貿易の仕事や勉強をすればわかるとおり、貿易の世界では「国」の存在を意識せざるをえないのも現実です。
それぞれの国にある許認可手続や、輸出、輸入のいずれにおいてもある通関手続を無視することはできないのはいうまでもありません。
また、民族や宗教、習慣などの統一性に起因してできたものが国である以上、貿易マーケティングも「国」を意識せざるを得ないでしょう。
当面、「国」の存在がなくなりそうな様子はありませんから、貿易ビジネスは「International」をベースに仕事をしている分野だといえます。

つまり、経営面や戦略面では「Global」な視点で活動するとしても、実務面・運用面では「International」な観点が必要という二重性があるのが貿易の世界なわけです。
Globalであるためには、Internationalな分野の知識がなければただの絵空事です。
ビジネスを大きくするためには、Internationalに留まっていてはだめで、Globalな視点を持たなければいけません。

両方揃っていてこその「優秀な国際ビジネス人材」というわけですね。(I)