AEO事業者の価値がでるのはこれから?

前回、輸出者/輸入者にとってAEO事業者として承認・認定を受けるメリットがあまり実感がないという話をしました。
実務的にほとんど通関業者に手続きを委託しているので、手続きの「簡素化」といっても直接的な関係が薄いからです。
しかし、AEO事業者となることの本当のメリットは、日本での通関手続きの簡素化以外のところにあるとも言いました。
今回はそれについて説明しましょう。

1つは、「AEO事業者であること=コンプライアンスに優れていると税関に認めらている」とアピールできるということです。
CSR(企業の社会的責任)が叫ばれ、コンプライアンスに優れているかどうかが企業選択の1つの要素になっている現在です。
AEO事業者であることは、対外的に大きなアピールポイントになります。
事実、私が訪問したあるAEO事業者では、玄関先の目立つところにAEO承認証を飾っていました。

ただこれは、間接的なメリットで、直接的なメリットは別にあります。

近年、日本政府は様々な国と、事業者のAEOステータスを相互に認める、「AEO相互承認」を推進しています。
二国間物流におけるセキュリティレベルを向上させつつ、国内外一貫した一層の物流円滑化を目指すのが目的です。
状況と効果(通関手続の迅速化、効率化)としては、下の3つが挙げられます。

  • 輸出者がAEO事業者-輸入者が非AEO事業者
    輸出国で、当該国のAEO効果+相互承認効果
    輸入国で、相互承認効果
  • 輸出者が非AEO事業者-輸入者がAEO事業者
    輸出国で、相互承認効果
    輸入国で、当該国のAEO効果+相互承認効果
  • 輸出者がAEO事業者-輸入者がAEO事業者
    輸出国で、当該国のAEO効果+相互承認効果
    輸入国で、当該国のAEO効果+相互承認効果

相互承認効果とは、相手国事業者のリスク評価においてAEO事業者であることを考慮して、リスクに応じた書類審査・検査の負担が軽減されることを意味します。
その結果、貨物のリードタイムが短縮されることになります。
もちろん、競争力の面でも、そういう「取引がスムーズにいく」企業であることは、選ばれるための理由の1つになるといえるでしょう。

現在(2015年10月)、日本は、ニュージーランド、米国、カナダ、EU、韓国、シンガポール、マレーシアという7組のAEO相互承認を実現しています。
相互承認制度を使うには、各AEO事業者が持っている相互承認用コードを相手に送るのが原則です。
日本では、送ってもらったコードを、輸出入申告の際にNACCSの「海外仕出人・仕向人コード欄」に入力することになります。
詳細は、税関のウェブサイトに掲載されているので、ご覧になるといいでしょう。

税関の広報があまり積極的でないので、通関士試験にも出題されませんので、残念ながら、この制度はあまり知られていません。
しかし、各協定ではより相互承認効果を高める方法を模索することになっているとのことですので、将来に向けて、本制度を研究してみる価値はあると思います。