消費税の制度はどう変わる?

2017年4月の消費税率アップに伴って、軽減税率が導入されるのかどうかが話題になっています。
この軽減税率制度は、食料品など生活に密着した物品については、10%よりも低い税率に留め置くという考え方です。
実は、この軽減税率の問題、貿易の世界にも関係します。

輸入について知識のある方ならば、輸入通関時には関税だけでなく、消費税を納付しなければならないことはご存知だと思います。
関税が無税の物品であっても、消費税は原則的には免除されません。
そのため、消費税法の改正に貿易は大きく影響を受けるわけですが、ここで大きな問題となる点が2つ出てきます。

1つは、対象品目です。
今のところ、軽減税率の対象となる物品は食品の一部となる予定です。
しかし、その対象とされる品目が、輸入通関で使われる分類(いわゆる税番)と一致するのかどうか大きな問題です。
もしかすると、同じ税番でも使われ方によって、軽減税率適用と適用外に分かれる可能性もあるかもしれません。
となると、NACCSで申告をする現在、10桁目の枝番が増えるということになるかもしれません。
たしかに申告は通関業者に任せていることがほとんどでしょうが、輸入される物品の使われ方について、輸入者と通関業者の間の情報のやりとりが必要になります。
つまり、業務が煩雑化するであろうということですね。

もう1つが、税還付の問題です。
事業者にとって消費税の納付のシステムは、販売先から受け取った(預かった)消費税=預かり消費税から、調達元に支払った消費税=支払い消費税を引いて、その差額(プラス額)を納税することになっています。
貿易では支払い消費税が通関時に支払う消費税にあたるわけですが、これを「仕入れ税額控除」と言います。
現在のように、預かり消費税率=支払い消費税率であれば、基本的には事業者は消費税を納税することになります。
販売額のほうが仕入額よりも高くなるのが普通ですから、預かり消費税>支払い消費税となるのも普通だからです。
※一定の場合には差額はマイナス額となり、その場合には還付を受けることができます。
しかし、軽減税率が導入され、仕入れでは通常の税率で、販売では軽減税率という状況になると、必ずしも差額がプラスになるとは限りません。
受取消費税のほうが小さくなるからです。
よって、きちんと管理・記帳していないと、正しい消費税の申告もできなければ、還付を受けることができるチャンスを逃すことになるかもしれません。
最近は、ほとんどの会社で経理には会計システムを導入していますが、新消費税に対応したものじゃないと困ることになりかねませんね。

いずれにせよ、2017年なんて先のように思えますが、準備のことを考えるとあっという間です。
貿易に携わる人は、消費税なんて経理の話だなんて考えずに、今後の動向に注視する必要がありますね。(I)