麻薬探知犬のおはなし

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年のお正月ですが、1月3日のテレビでは偶然なのかどうなのか、ネタに貿易の要素が入ったドラマが2つ放映されました。
1つは再放送ですが、「相棒 Season11」の最終話「酒壷の蛇」という回です。
これは以前に紹介したのですが、外為法がキーワードになっている回です。
もう1つは、人気ドラマシリーズ「 科捜研の女」の正月スペシャルです。
序盤に関西国際空港が舞台となり、国際線到着ターミナルの旅客手荷物から麻薬探知犬が麻薬を発見するという場面がありました。

麻薬探知犬チームのマーク登場していた麻薬探知犬とハンドラー(訓練士)の方が本物の人だったのかはわかりません。
しかし、ドラマに出ていたレトリバーは実際に関西国際空港で活躍している犬種です。
また、私が見たテレビの画面はあまり大きくなかったので、詳細はわからなかったのですが、税関職員の制服も本物と同じではなかったかと思います。
ちゃんとハンドラーの方の右腕には税関の、右腕にはK-9のエンブレムがありましたし。

ちなみにこの「K-9」という文字、前回の記事で書いた門司税関の方がおっしゃるには意味があるとのこと。
犬を意味する言葉に「canine」というのがあります(写真のエンブレムにもその文字が見えます。)が、その音がK-Nineに似ていることから、警察犬や麻薬探知犬、爆発物探知犬などの訓練を受けた犬をK-9と総称するそうです。
なので、米国の警察の警察犬チームの方の制服にもK-9と書いたエンブレムがついていることが多いようです。

前述のとおり、関西国際空港ではレトリバーが活躍していますが、ほかにも日本ではシェパードもいるそうです。
どちらも好奇心旺盛、遊び好き、独占欲が強いなどといった特徴があり、それが麻薬探知犬となるために重要な要素だとか。
ただ、空港の手荷物受取場のところ(ベルトコンベアのところですね)にいるのはもっぱらレトリバーで、シェパードはちょっと厳つくて旅客が驚くかもしれないということで、手荷物受取場の裏手で活動しているのだとか。

門司税関の麻薬探知犬ハンドラーさんが良く受ける質問は、「麻薬を見つけたら、麻薬探知犬はどうするんですか?」というものだそうです。
そりゃあ、普通の人は見つけられたことがないはずですから、犬がどういう行動を取るのかわかりませんよね(笑)。
答えは、「その場に座る」で、実際にデモンストレーションのときもそうしていました。
決して、ワンワンと吠え立てるわけではないのです。もし、空港の手荷物受取場で、あなたの横に犬がちょこんと座ったら、それは懐いてるのではなくて、疑われているということです。

そして、ハンドラーさんが一番受ける質問は、「麻薬探知犬は訓練で麻薬中毒にされて、それで麻薬が探しているんですか?」というものだそうです。
どうやら、そういう都市伝説があるらしいですが、これは間違いです。
麻薬探知犬は、最初はハンドラーと麻薬の匂いをつけたタオルを巻いた玩具(「ダミー」といいます)で遊びます。
ダミーを見つけると褒めることを繰り返すことで、犬は「これを見つけると楽しいことがある」と覚え、次第に、麻薬の匂いそのものを探すようになるわけです。上記のように、麻薬探知犬の適性として「好奇心旺盛、遊び好き、独占欲が強い」が挙げられるのは、この遊びを好んで行うからですね。
独占欲の強さは特筆もので、デモンストレーションでダミーを見つけた麻薬探知犬はそれを咥えてなかなか離しません。
ハンドラーさんがダミーを犬ごと持ち上げて、ジャイアント・スイングのような状態になってもまだ咥えているのですから、たいしたものです。
それでいて、デモンストレーション後のふれあいイベントで、けっこう来場者にいじりまわされながらも、少しも吠えることなく、従順に遊ばれていました。
こういう、人見知りしない、人に攻撃的でないというところも、麻薬探知犬として重要な資質だそうです。

ちなみに、昨年4月から、麻薬類だけでなく危険ドラッグも「輸入してはならない貨物」になりました。
そこで「麻薬探知犬は、危険ドラッグも探すことができるんですか?」と質問してみたところ、まだ匂いを覚えさせる訓練をしていないので無理なんだとか。
もしかしたら、今後、危険ドラッグも探知できる犬が登場するのかもしれません。
上記ドラマでも終盤、麻薬から加工された危険ドラッグをどうやって探すのかということで、麻薬探知犬は使えないかという話があり、いろいろと加工されて匂いが変わっているので無理という設定でした。ちゃんと現実に即した設定でドラマを作っているんだな、と関心した次第です。

麻薬探知犬のデモンストレーションは、税関のイベントで時々行われています。
みなさんも機会があれば一度ごらんになって、犬たちの麻薬に匂いをかぎ分ける技に驚いてみてください。(I)

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