神戸、乙仲通り

乙仲通りであることを示す標識神戸には、「乙仲通り」という通りがあります。
「乙仲」というと、貿易関係者や勉強した人は「え?」と反応するかもしれません。
そう、海貨業者、フォワーダーを意味する乙仲の名を冠しているのがこの通りです。

場所は神戸・元町駅を出て南へ、有名な南京町をさらに越えた栄町通りと海岸通りに挟まれたところです。
栄町通りは旧外国人居留地の西側に隣接するエリアで、かつて(明治から戦後しばらくの間)は商社や銀行が立ち並んで「東洋のウォール街」とも言われた貿易港神戸の中心地だった場所です。
歴史の教科書にも出てくる、戦前の総合商社、鈴木商店もここにありました。
海岸通りはその名のとおり、かつては外国貿易船が発着する埠頭(当時は波止場と呼ばれていました。)があったエリアで、ここにも大手船会社や外国銀行が立ち並んでいました。
喜劇王チャップリンが日本上陸したのも、ここの埠頭です。

乙仲通りの由来看板その当時、この両エリアに挟まれていたエリアには乙仲さんがたくさんオフィスを構えていたため、「乙仲通り」と呼ばれるようになったわけです。
正式な地名ではなく、俗称として呼ばれていたようです。

現在、神戸の外国貿易船が発着するエリアはポートアイランドや六甲アイランドに移っていて、海岸通りの埠頭であった場所「メリケンパーク」という公園に変わってしまいました。
そのため、ここにオフィスを構える乙仲さんはほとんどなくなりましたが、往時の神戸の繁栄を示すかのように、凝った装飾、余裕のある構造のオシャレな建物が多く残っています。
登録有形文化財になっている建物もあり、まさに、戦災にも震災にも負けずに建っているといっていいと思います。
そういった建物はいまや、オシャレなブティックや雑貨屋、カフェ、レストランなどに姿を変えて、神戸の観光スポット、デートスポットとして、休日には多くの人で賑わっています。
地域の活性化のために「乙仲通界隈プロジェクト委員会」が店舗の誘致を行っているとか。
今の「乙仲通り」という名称も、市民の声により平成20年に俗称だったものを正式名称にしたものです。

萬国波止場の碑また、海岸通りの南側、埠頭のあったところは、上述のとおり現在は臨海公園になっています。
神戸のシンボル、ポートタワーもここにあります。
入口には外国貿易船の埠頭があったことを示す「神戸税関 萬国波止場」の碑が建っています。
別の面には「メリケン波止場」とも。
そもそも公園の「メリケンパーク」という名前は、メリケン波止場からとられたものです。
では「メリケン」とは?
このすぐ近くにアメリカ領事館があったので、アメリカン → アメリケン → メリケン となったわけです。
昔は、輸入小麦をメリケン粉と呼んでいました(国産のはうどん粉と呼んでいました)が、これは米国産のものが多かったためで、それと語源は同じというわけです。

このように、かつての神戸の繁栄ぶりを感じることができる、これらのエリア、神戸にきたらぜひブラブラと歩いてみたらいかがでしょうか。(I)

乙仲通りのビル

日本郵船ビル-旧米国領事館

海岸通りビルディング

海岸通りビルディングの中

栄町ビルディング