ニセモノの輸出入が禁止されない場合がある?

特許権や意匠権、著作権といった知的財産権、また、不正競争防止法に規定する保護対象商品等表示等を総称して、知的財産と言います。
こういった知的財産を侵害する物品、いわゆる「ニセモノ」は、輸出も輸入もしてはならない貨物であるということは、貿易実務や通関士の勉強をした人ならご存知だと思います。
それも、いかなる場合でも輸出/輸入が認められない「絶対的禁制品」です。

ところが、知的財産の侵害とならない場合もあることをご存知でしょうか?
それは関税法基本通達69 の2-6、69 の 11-6で「業として輸出/輸入されるものでないもの」と示されているものです。
「業として」という言葉については、簡単に言えば「事業として」、つまり、「ビジネスとして」という意味です。
細かい定義は複雑なのですが、個人的・家庭的な目的ではないものと考えていただければ結構です。
(反復継続性とか、営利性は関係ありません)知的財産に関しては通常、たとえ権利者が別にいるものであっても個人使用での複製は容認されます。
例えば、好きなアニメのキャラクターを自分のノートに書いたとしても、それだけでは意匠権や著作権を侵害したといって取り締まりを受けたりしないということから理解していただけると思います。

「ふーん。じゃあ、海外でニセモノを買ってきても、自分で使うのが目的だったらいいんだ?」と思われるかもしれません。
なかにはウケ狙いでそういうものを集めて、笑いをとろうかと思う人もいるかもしれませんね。

しかし、そう簡単な話ではなく、「個人輸入ならば大丈夫」というわけでもありません。
個人ベースで輸入(それこそ旅行のお土産として持ち込んだものも含みます)したものであっても、それを他人に販売や譲渡をすれば、知的財産を侵害をしたことになります。
日本では、個人事業主に限らず、単発であっても個人がものを販売することができる国ですし、お土産であれば他人に譲渡される可能性はあります。

なので、上記の通達では「輸出/輸入の目的、輸出/輸入貨物の数量、輸出者/輸入者等の職業、輸出/輸入取引の内容等の諸事情を総合的に勘案する」と示されています。
しかし、輸出/輸入の段階で、それが個人使用のみなのかどうかを判断することは、なかなか難しいと言えます。
個人レベルで「個人使用目的であって、決して販売も譲渡もしない」といった証明をするのは実質的に不可能ですよね。
ですので、よほどのことがない限り、「任意放棄書(C-5380)」を提出して、「輸出者/輸入者等が『自ら』当該物品について任意放棄等の自発的処理をする旨の申し出をする」ことが一般的になります。

まあ、「業として」と言葉の意味とか、まだ輸出/輸入されていない=違法行為をする前に取り締まることの正当性であるとか、知的財産権に関する法律の専門家の間ではいろいろと問題はあるそうです。
しかし、ウケ狙いのためにわざわざお金を払った挙句、廃棄させられることになるなんて、まったく無意味ですよね。
結局のところ、変に抜け道の条文を探すようなことは、無駄ですし、やめといた方がいいということですね。
法令というのは、うまくできているものです。(I)

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