手荒い扱いを受けることもある

貿易運送は日本国内での運送よりも事故の可能性が高いのが普通です。
ですので、より安全性の高い運送経路を検討したり、梱包に注意を払うことが大事なのは言うまでもありません。
しかし、事故の可能性が低い運送経路を考えた、信頼性の高い船会社/航空会社を選んだ、梱包も厳重に行った、なら安心かというとそうでもありません。
港や空港での貨物の扱いが悪かったせいで、貨物に損害が出てしまったという事故は珍しくありません。

雑な貨物の取り扱いのことを、業界では「ラフ・ハンドリング」と呼びます。
本来、貨物取扱いのプロが作業しているはずの港や空港で「起こされてしまった」事故なので、困ったものです。

下の動画はラフ・ハンドリングの事例です。

投げられ、落ちてしまった箱がベコベコ凹んでいる様子が見て取れます。
おそらく、中の貨物が無事なわけはないでしょう。
これは極端な事例ではあるかもしれませんが、海外、とくに途上国では、貨物を蹴って向こう側に押し出す、貨物を踏み台にするといったことがけっこうあります。
トラックの運転手が、小銭稼ぎのために本来の契約貨物以外の貨物を荷台に載せ、そのためにギュウギュウとなった貨物が潰れていたという事例を聞いたこともあります。

また、上記のような作業員による作為だけでなく、作業中の注意ミスによるものも、ラフ・ハンドリングには含まれます。
例えば下のような事例です。
・貨物を乗せたパレットをフォークリフトで持ち上げるときに、フォークリフトの爪を下げ足りずにパレットの下ではなく貨物を突き刺してしまった。
・速度を出しすぎてカーブ時に貨物が転げ落ちてしまった。
・重い貨物を上に重ねてしまったがために、下に置かれた貨物が
・うっかり水たまりの上に貨物を下してしまった。

問題は、こういったラフ・ハンドリングによる事故が結構多いことです。
(一社)日本海事検定協会が「輸送貨物の事故情報に関するデータベース 報告書」を公表していますが、この2013年度版を見てみましょう。
これを見ると、事故形態のうち汚損や破損では、ラフ/ミスハンドリングが原因である割合が高いことがわかります。
ところが、輸出者や輸入者がどれだけ工夫しても、なかなかラフ・ハンドリングによる事故を減らすことができないのも現実です。
たしかに、頑丈な梱包をすれば手荒い扱いを受けても損害を被ることはないのでしょう。
しかし、そうしようとすると、今度は梱包コスト、そして、梱包分容積・重量が増えるので運賃が上がりますので、コスト競争が激しいこの時代、現実的ではありません。
結局のところ、リスク回避はある程度までに抑えざるをえず、いざ損害が発生したときには貨物保険でカバーする、そう覚悟するしかないんでしょうね。(I)