「から、まで」はどう表す?

貿易のみならずビジネスでは「日付」や「期限」はとても重要です。
契約内容によっては、「期間」を取り決める必要がある場合もあります。
例えば納期です。
納期は、買手のところに商品を届けなければならない「期限」を「日付」で表すのが一般的ですが、買手側の倉庫の空き具合、在庫状況といった様々な都合によって「いつからいつまでの間」という「期間」で示されることもあります。
なお、貿易の世界では運送遅延がしばしば発生するため、納期は輸出港で船積みをすべき時期、つまり、船積期限として示すことが多いと言われます。

では、この期限や期間は英文ではどう表現するのか考えてみましょう。

期限、つまり、「いつまで」というエンド日付を示すのであれば簡単です。
例えば船積期限を「20XX年6月15日まで」と示す場合は、下の2つのような表現が一般的です。

  • Time of Shipment : By June 15, 20XX
  • Shipment must be dated on or before : June 15,20XX

2つ目の「on or before」は「記載日当日、または、それより前」という意味ですが、これは「before」は当日を含まないためです。

では、「いつからいつまでの間」という期限、例えば「20XX年6月5日から25日までの間」という場合はどうでしょう?
国内であれば「20XX年6月5日~6月25日」と、「~」という記号をよく使うのではないでしょうか?
ところがよく考えて見ると、この「~」というのは日本語の全角文字ですから、英文にはないものです。
よって、英文では、「June 5 thru June25, 20XX」であったり、「June 5-June 25, 20XX」といった表記をします。
thruはthroughの略語ですが、日本語の「~」の代わりは「-」で示すわけですね。

さて、ここで簡単に「-」と書きましたが、皆さんはPCなどで入力する際に、この「横棒」の表記にどの程度、気をつけていますか?
日本語で長音を示す「ー」は論外として、横棒の文字がたくさんあることに気付いてますか?
これらは全て、下のように意味が違います。

  • − :マイナス
    言わずと知れた、負の数字を表したり、引き算記号として使われるものです。
  • - :ダッシュ(en dash)
    区間や範囲を表すために使われるものです。つまり、上記のような期間を表す場合にはこれを使います。
  • —:ダッシュ(em dash)
    行頭に付けることで引用であることを示したり、前の文の追加説明であること、または、副題であることを示す場合に使います。
  • -:ハイフン
    単語の途中で改行する場合に1単語であることを示したり、複合形容詞を構成する場合に使います。

それぞれ微妙に長さが違うのですが、画面で見れば、とくに、プロポーショナル・フォントで見ると、ほとんど見分けが付かないのが困ったところです。
em dashはen dashの倍の長さ(つまり、mとnの幅)ということになっており、em dashがフォントにない場合には、en dashを2つ重ねたり、en dashの前後に半角スペースを入れて代用することもあります。

この違いを意識せず(というか知らないので)、文字幅や文の区切りがちょうどよいバランスになるようになど、いうなれば「フィーリング」で適当に使っている人も多いのではないでしょうか?
(私も長い間、この違いを意識することはありませんでした。)
しかし、英文の世界(とくに論述の世界)では、これらの文字の用法がそれぞれ区別されています。
ビジネスレターでは、あまり細かいことを言われたりすることはなく、たとえ期間を示すのに間違ってハイフンを使ったとしても「ああ、en dashのつもりだろうな。」と考えてくれるとは思います。
しかし、相手に舐められないように臨むのは、ビジネスの重要な姿勢です。
こちらが英文に弱いと思われて侮られないように、きちんとした表現を知り、使えるようにしておいたほうがいいでしょう。(I)