貿易分野で働く犬たち

犬が昔から、人間にとって良きパートナーであることはよく知られています。
ペットとしてだけでなく、人間のために色々な役割、むしろ、業務といってもいいことをする犬もたくさんいることも知られています。
そういった人間のために仕事をする犬たちを総称して「使役犬」といい、また、「K9」とも呼ばれます。

貿易分野でも使役犬が活躍している場面は多くあり、一番有名なのは、麻薬探知犬でしょう。
税関が使役している麻薬探知犬については、以前の記事にも書きました。
麻薬探知犬のおはなし 2016年1月4日
税関のゆるキャラ、カスタム君もモデルは麻薬探知犬です。

しかし、最近では新しい使役犬が活躍を始めています。

まずは、「爆発物探知犬」です。
名前のとおり、爆発物を探知するのがその役割ですが、日本では警察だけではなく、税関でも配備しています。
税関では従来の麻薬探知犬に、爆発物の臭いもかぎ分けるように
訓練をした犬を活用しています。

これと似たものとしては「銃器探知犬」も導入されています。
やはり嗅覚で銃器やその部品を発見する能力を身につけたものです。
日本では、税関がオーストラリアで訓練された2頭を2009年4月より、成田空港に導入しています。

税関以外でも、犬を使役しているところがあります。
農林水産省 動物検疫所が導入している「検疫探知犬」がそれで、手荷物の中から動植物の検疫検査を必要とする肉製品や果物などの物品を嗅ぎ分けて発見することができます。
2005年12月に成田空港に2頭導入されたのを皮切りに、現在(2017年10月)、主要な国際空港などに26頭が活躍しています。
動物検疫所のウェブサイトでは、ほとんどがビーグル犬のようですが、おそらく、こういった業務に向いている嗅覚を持っているのでしょう。

面白いところでは、環境省が導入を検討している「ヒアリ探知犬」です。
最近、外来種の蟻、ヒアリが各地で発見されて問題になっているというのはご存じだと思います。
最初に発見された場所が港であったところから、貿易貨物、おそらく、コンテナの床板に潜んで日本に侵入してきたと思われるヒアリは、強い毒を持っていることから、その早期発見と駆除が課題となっています。
外国では、そのヒアリを発見する能力を持った「ヒアリ探知犬」というものがおり、日本でもその導入実験を始めると報道されました。
(「ヒアリ探知犬、日本に導入 台湾から18年春にも」日本経済新聞 2017年10月16日付)
これもビーグル犬のようですが、果たして日本の気候の中でも探知できるのか、既に活躍している台湾より連れてきて実験を行うとのこと。
ビーグル犬といえば、スヌーピーのモデル。
スヌーピー VS ヒアリ、ちょっと面白そうですね。

また、日本にはいないのですが、外国には「DVD探知犬」というのがいるとのこと。
これは、海賊版DVDの密輸を防止するために、空港の手荷物検査場などで活躍している犬です。
光ディスクの臭い(ポリカーボネイトに含まれる化学物質の臭いだそうです)をかぎ分ける訓練を積んだ犬だそうで、主な犬種はラプラドール・レトリバー。
しかし、さすがに臭いだけでは正規品なのか海賊版なのかの区別はつきませんので、手荷物にDVDが入っていて怪しそうな人物だったら「開封しろ」と命じるという形のようですね。
米国やマレーシアでは既に摘発実績がある一方、マレーシアでは犯罪組織がDVD探知犬の抹殺に賞金を懸けたという情報もあるようで、使役犬の中ではなかなか大変な感じです。

これらの使役犬の多くは、空港の手荷物受取場や検査場(税関カウンター)といった、旅行者にはなじみのある場所で活躍していますので、見かけることもあるでしょう。
懸命に働く姿はかわいいので、犬好きの人は構ってあげたい、応援してあげたい、という気持ちがわいてしまうかもしれません。
しかし、なにせ彼らは仕事中なので、そっと見守るだけにしてあげて下さいね。(I)