「JMU 呉事業所祭り 2018」に行ってきた

11月3日、広島県呉市にある造船会社、ジャパン・マリン・ユナイテッド(以下、JMU)さんの呉事業所で開催された事業所祭りに参加してきました。
JMUは、ユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドが合併してできた会社で、ここ呉事業所は元は、石川島播磨重工業(IHI)の事業所であったところです。
というか一般的には、かつては呉海軍工廠だった場所で、戦艦大和をはじめとした多くに旧日本海軍艦艇が建造されたところとしての方が知られているかもしれません。
大和を建造していた船渠には当時からの大屋根(建造を秘匿するためのもの)が現役の作業場として残っています。
今でも、海上自衛隊の基地に隣接していることもあり、商船だけでなく護衛艦の建造や修理も行われていて、今回も修理のために入渠している護衛艦を垣間見ることができました。

さて、この事業所祭りは基本的にはJMU従業員の家族や近隣住民向けの感謝祭的なお祭りです。
しかし、呉ではそれなりに有名らしく、呉市の観光イベント案内に出ています。
従業員の方が屋台を出していたり、地元の和太鼓楽団や広島のご当地アイドルのミニコンサートなど盛りだくさんですが、その中でもとくに人気なのが、建造中の商船に乗って見学できるイベント。
今回は、超巨大なコンテナ船に乗ることができました。

この事業所の造船スタイルはドック式。
以前、私が見学した造船所は2回とも船台式(1回目2回目)で、進水式では船が海に向かって滑り降りていくタイプでした。
一方、こちらのドック式では、海に繋げて掘り下げたドック(船渠)に海水を入れない状態で船体を作り、ある程度できたら進水式として、ドックに海水を注入して海に引き出すことになります。
見学時には同型のコンテナ船が同時並行で建造されており、既に進水して海に係留されているものが2隻、ドックでほぼ出来上がっていて進水待ちのものが1隻、ドック内でまだパーツを組み上げている途中のものを1隻見ることができました。
いずれも船体に「ONE」と記載されていますので、日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船運営船社が事業統合して2017年10月にできたばかりの新会社「オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン」が発注したものであるとわかります。

見学対象は進水済みで海に係留されたものですが、残念ながら船体の写真撮影は禁止。
JMUさんにしてみれば、顧客の商品ですし、進水式はしたものの「命名式」はまだ行っていないので、SNSなどで船名付きの写真が流布するのはよくないという判断だと思われます。
(船には既に船名が記されていますので。)
ちなみに、このONEのコンテナ船シリーズは全て鳥の名前(英語)が付けられているとのことです。

まだ艤装中で危ないため内部には入ることができません。
それでも、この船は全長364m、全幅50.6m、20フィートコンテナを14,000個(14,000TEU)積むことができる巨大船ですので、ここで作られた戦艦大和(全長263m、全幅38.9m)よりも巨大です。
地上から甲板に上がるにもビルでいえば4~5階建てぐらいの高さまでエレベーターで上がる必要があります。

甲板上ではそこここで、JMUの方が親切に説明してくれました。

本来この船はONEの元になる3社のうちのある船会社のために建造されていたものだったということ。
船体の色もその会社用に塗られていたのですが、新会社への統合が決まり、急遽塗り直しをすることになり、さそがし大変だったのだとか。
なかなか見ないピンク色(正しくはマゼンタ)の船体は海上でさそがし目立つことでしょうが、JMUの方は「Youmeタウン色」といっていたのが面白かったです。
※Youmeタウン(ゆめタウン)とは、地元広島が本社で、中四国に多くの店舗を持つスーパーマーケットチェーンで、この呉にも駅前にあります。

カタログスペックでは、甲板下に最大11段、甲板上に9段積むことができることになっていますが、実際にはもう少し高く積んでも大丈夫だそうです。
エンジンを含めて内部の機関類には最新の設備が使われていること、錆止めを含めて塗装は4層で行われていることなどを説明していただきました。
事業所の外から遠景で撮った船体を見るとわかるのですが、通常の貨物船では操舵室などがある船橋(ブリッジ)は船尾当たりにあるのですが、この船では前寄りにあるということ。
聞けば、これほど巨大な船になると船尾にブリッジがあると、前方が見えなくなるためだそうです。
ブリッジは「塔」と言えるほど大きいのですが、ここに居住区があります。
これだけの巨大船でも30人程度で運航できるのだとか。
船体にコンテナを固定するためのラッシング(固縛材)を掛ける場所であるとか、甲板に見えることは実は蓋でこれを空けて(外して)甲板下にコンテナを入れるのだとか、コンテナ船の構造がよくわかりました。

下船後の会場では、この祭りの開会式で空けて振る舞われた樽酒を、これまた配られた桝で何倍もいただき、また、屋台でいろいろなものを食べ、音楽イベントも大いに楽しめたイベントでした。
興味のある方は、来年の初秋頃には呉市の観光イベント案内に出ると思いますので、こまめにチェックされるといいと思います。(I)

JMU入口

戦艦大和を建造した船渠の大屋根

戦艦大和を建造した船渠の大屋根

 

護衛艦が入渠中

護衛艦が入渠中

JMUクレーン

コンテナ船遠景

コンテナ船遠景

 

ブリッジ

船のブリッジ

Youmeタウン

ご当地アイドル

ご当地アイドルのミニコンサート

JMU事業者祭の桝