国際的詐欺も複雑化してきている
先日見たニュースで「カダフィ大佐の娘を騙り、お金を騙し取ったとして日本人が逮捕された」というものがありました。
騙し取られたのも日本人なので「国際詐欺」かと言えばそうでないのですが、ネタとして使われたのが、ある意味、昔懐かしいリビアの元大統領カダフィ大佐ということで、詐欺のネタもグローバル化したものだなと思います。
若い方はご存じないかもしれませんが、カダフィ大佐はリビアで長期の独裁政権を維持しましたが、2011年の内戦で政権が打倒され、挙句、暗殺された人物です。
そのカダフィ大佐の娘、アイシャ・カダフィ氏は実在の人物(存命)ですが、本人は今回の詐欺事件には全く関係ありません。
逮捕されたのは大阪の「おばちゃん」ですが、バックにはさらに大きな詐欺グループがあるとのこと。
本件詐欺の手口としては、
「自分は現在オマーンで逃亡生活を送っている。」
「しかし、国連の標的になっていて、父(カダフィ大佐)の遺産を全て奪われそうになっている。」
「遺産を移すために協力して欲しい。申し出を受け入れてくれたら、遺産の一部を差し上げる。」
「ただし、遺産の運搬のためには保証金が必要で、それを払ってほしい。」
というメッセージを送り、190万円を送金させたというものです。
これだけだと(ある意味)伝統的な「国際ビジネス詐欺」の手口です。
私のところにも、カダフィ大佐の娘ではないですが、ナイジェリアの某部族のプリンセスだとか、コートジボワールに駐留しているフランス軍大佐だのを騙って、「資金移動の手伝いをしてくれたらお礼をします。ただし、先に保証金を振り込んで下さい。」というのがちょくちょく来ます。
(迷惑メールボックスに自動で直行ですが。)
国際ビジネス詐欺については、外務省やジェトロでも注意喚起しています。
<外務省>
・海外邦人事件簿|Vol.04 日本国内で遭う国際詐欺事件
・海外邦人事件簿|Vol.47 おいしいメールと国際詐欺
<ジェトロ>
・国際的詐欺事件について(注意喚起)
とくに、ジェトロのページでは、最近の手口も追加されていますので、一度ご覧になると良いと思います。
今回の事件で、これまでのと少し違うなと思ったのが、別の国際詐欺の手口である「国際ロマンス詐欺」と絡めている点です。
国際ロマンス詐欺というのは、恋愛感情を利用して「あなたと結婚するために日本に行く渡航費を出して欲しい」だの「家族が困窮しているので生活費を送ってほしい」といってお金を遅らせるものです。
本件でも「日本で新たな生活をあなたと始めたい」とのメッセージを送っているので、ビジネス詐欺とロマンス詐欺を混ぜたものといえ、ターゲットがどっちの要素ででも引っかかるようにしているのでしょう。
ここで気になるのは「やりとりは何語で?」ということじゃないでしょうか。
大阪府警が再現画像を公開しているのですが、日本語で送ってきていたようです。
(LINEっぽい画像ですが、そうとは限りません)
これまでの国際ビジネス詐欺は英文メールでしたし、「海外からのメールで日本語っておかしいやん?」と思われるかもしれませんが、今やAI翻訳の正確性もかなり高くなってきていますから、あながち「ありえない」とも言えません。
実際、迷惑メールボックスの入っている詐欺っぽいメールでも、日本語が上手くなってきているのがわかります。
どんなに流暢な日本語でも、どんなに有りそうな話でも、「先にお金を払ってくれ」という話には「自分にだけこんなオイシイ話が(ビジネスだけでなく、モテ話でも)来るはずがない」と警戒する必要があるでしょう。(I)