未来でも貿易業界は紙が大好き?
ガンダムシリーズの最新作として話題の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」ですが、その(執筆時点で最新話)第6話で輸入申告のシーンが登場しました。
地球(種子島)から(スペースコロニー群)サイド6への貨物で、この物語ではサイド6は独立国という設定になっていますから、「輸入」という扱いになるのはその通りなのですが、ポイントはその申告方法です。
人類が宇宙に住むようになっても「輸入(納税)申告書」、つまり、紙ベースでの申告が行われているのです。
さらにいうと、その書式が日本の輸入通関で(マニュアル通関で)使われている書式とほぼ同じだっただというのが面白いところです。
もちろんタイトル部分に消費税のことが書かれていなかったり、記載項目名が一部英語だったりと違う点はあるのですが、それ以外はほとんど同じです。
「ほぉ、宇宙世紀では、日本式の申告書がデファクトスタンダードになってるんだな」とニヤけてしまいます。
より細かく見ていくと、申告価格がCIFベースとなっています。
また、今回の輸入品は「Air Conditioner」なのですが、申告書の品目名の上には「8415.10」と書かれているのですが、これは現在のHS番号で「エアコンディショナー」になっています。
絶対、これ貿易をわかってる人が作画してるよね、細かいところまで手を抜かないんだなぁ、と思わずにはいられません。
その一方で「なんで宇宙世紀になっても紙なの?日本式が導入されてるんならNACCSは使われてないの?」とも思います。
その辺は、例えばミノフスキー粒子のせいで通信がうまくいかないので紙に戻ったとか、大きな戦争を経てデータよりも紙の生残性が見直されたとかいう設定があるのかもしれません。
もっとも、宇宙世紀になっても「貿易業界は紙が大好き」なのかもしれませんが。
下手したら物流業界はFAX使ってるかも(笑)
このシーンの細かいとこは、申告書だけではありません。
次に運ばれてきた貨物が登場するのですが、そこにはダイキンのキャラクター「ぴちょんくん」っぽいイラストが。
会社ロゴもなんとなくダイキンっぽかったりします。
そのあたりまでならパロディーだね、ということなんですが、右上のマークがポイントです。
45度に傾けた正方形に「H」、「L」という表示がありますが、これはJR貨物のコンテナに使われる「ハローマーク」をもじったものです。
ハローマークとはそのコンテナが、高さ(H)、長さ(L)、横幅(W)、総重量(G)それぞれについて規格内(運送制約内)かどうかを示すもので、規格内であれば塗りつぶされ、規格外であれば文字が示されます。
つまり、H、Lの文字が残っているのであれば、高さと長さが規格外なので、その点について積載できる貨車や入線可能な線区に制約があるということです。
ただ、実際のものは問題がない項目が黒で塗りつぶされ、問題がある項目が黄色地に黒文字ですから、アニメとは逆ですね。
細かいのはここだけではありません。
左下に「MSMN-39550」とありますが、これはコンテナ番号でしょう。
MSMNは(ダイキンの代わりにつけられている)社名「マサムネ」でしょう。
一方、「39550」は現実のJRコンテナにも使われている番号で、39550から39552番は
センコーが所有し、ダイキンが借受けたものなのです。
これらにはH、Lのハローマーク表記もあります。
(ただし39550は、現在はセンコーに返却され、ダイキンの表記が剥がされているとのこと)
これを考えると、ほんの短いシーンになんと細かいこだわりを入れているのかと驚嘆を禁じえません。
というか、ぜったいこれ、業界経験者が関係してるでしょ!