課税価格の考え方 3(据付・組立てなどの費用)

それでは、申告価格が「Value」を問われているものであることを、具体的にみていきましょう。
条文(関税定率法第4条第1項)に並んでいる順番で見て行くことにします。

まずは1号ですが、「当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用」となっています。
前回、「運送はその物品が有るところから、無いところに移動させる」行為によってValueを上昇させていること」、「保険はその物品の運送リスクを低減させる行為によってValueを上昇させている」と考えることができる、と説明しました。
輸入申告はCIFベースですから、「日本に到着する時点までValueを上昇させた」状態で申告するという意味になります。
そういう観点で見ることができれば、単純な運賃・保険料については、どこまでが加算要素で、どこからが控除要素なのかはわかりやすいでしょう。

本条については、関税定率法施行令にさらに細かく指定されています。
「課税物件確定の時の属する日以後に行われる当該輸入貨物に係る据付け、組立て、整備又は技術指導に要する役務の費用 」は「含まない」ことになっています。(関税定率法施行令第1条の4 第1号)
これは逆に言えば、「課税物件確定の時(つまりは、輸入申告の時)の属する日前」に行われる上記の各役務については加算するということになります。

なんとなく勘違いしてしまいがち(シチュエーションを想像しすぎてなのか)ですが、「課税物件確定の時の属する日前」とは、別に輸入港で荷降しして以降、輸入申告までというわけではありません。
海上運送中でも輸入港到着後の船上ででも構いません。

この意味としては、たとえば自転車の運搬方法を想像してもらえればいいかと思います。
自転車は組みあがった状態で運んでも構わないのですが、ペダルやサドルのせいでデッドスペースがひじょうに多くなります。
そのため、パーツで送ったほうが多くの台数を送ることができます。
しかし、自転車は組み上げることは役務としてValueを上昇させる行為で、自転車としては、その役務がないとValueは完成しません。
ですから、「輸入者は、その自転車をどういう状態で輸入したかったのか」が問題になります。

組み立てを輸入申告前に行ったのであれば、輸入者は「輸入時には組みあがった自転車」で輸入する意図があったということです。
よって、パーツで送ったのはしょせんは運送上の都合で、実質的に「輸出者のところで組み上げたのと同じ」と解釈できますから、船から降ろした後の組み立てであってもその役務の費用は加算するというのは妥当です。
一方、組み立てを輸入申告後に行ったのであれば、輸入者は「輸入時にはパーツ」で輸入する意図があったということです。
当初から自転車に組み上げるというValue上昇行為は、輸入後に行うことを意図しているわけですから、組み上げの役務を加算する理由はないということです。

その結果としてはこうなります
・申告前の役務の費用(加算要素)が
-Invoiceに含まれているならば、そのまま含まれていて構わない(±いずれもしない)
-Invoiceに含まれていないならば、含めなければいけない(+する)
・申告後の役務の費用(控除要素)が
-Invoiceに含まれているならば、含まれていてはいけない(-する)
-Invoiceに含まれていないならば、そのまま含まれていないままで構わない(±いずれもしない)

なお、関税率表の解釈に関する通則の通則2(a)により、(いずれかの物品には、)「完成した物品(この2の原則により完成したものとみなす未完成の物品を含む。)で、提示の際に組み立ててないもの及び分解してあるものを含む。」とあります。
よって、上記の自転車でいえば、組み立てが輸入申告前であっても輸入申告後であっても、分類はいずれも「自転車」です。
しかし、組み立ての役務費用を入れる、入れないの違いで「課税価格が変わる → 関税額が変わる」ということになります。
この点は勘違いしないように気をつけないといけませんね。