課税価格の考え方 5(仲介料等)

関税定率法第4条第2号の「当該輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用」は、さらにいくつかの項目にわかてれいますが、受験者の皆さんを悩ませるのは「イ 仲介料その他の手数料」(以下、仲介料等)でしょう。
「仲介料等」はよく出題されるテーマで、出題パターンは下の2つです。

  • 但書の「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く。」という部分を理解できているか。
  • 「仲介料」という単語ではなく、仲介料っぽい名目になっている費用について、仲介料等とすべきかどうか。

このうち、前者の但書についてはどのテキストにも出ているので、ちゃんと勉強している人は理解されているかと思います。
が、問題は後者で、条文の「仲介料等」という言葉に惑わされてしまいがちです。
仲介という言葉だけを見ると(不動産の仲介なんかのイメージで)、輸出者と輸入者の間のビジネス・マッチングを行った者に払う手数料のように思えてしまいます。
それはそれで正しく、関税定率法基本通達でも「イ 売手及び買手のために輸入取引の成立のための仲介業務を行う者に対し買手が支払う手数料」となっています。
過去の試験では「商社に支払う口銭」という名目で出題されましたが、まさにこれに当たります。

しかし、通達ではもうひとつ「ロ 輸入貨物の売手による販売に関し当該売手に代わり業務を行う者に対し買手が支払う手数料」というのを挙げているのを忘れてはいけません。
これを見ると、マッチングの手数料だけでなく、取引の成立はもちろん、その後に輸入者に商品が届くまで(CIFベース)に行われた「全ての必要が業務を代行したことに伴う手数料」が対象になっているということが読み取れると思います。
つまり、「当該輸入取引に必要なこと」についての外注費全般が対象になるという風に考えていいでしょう。

では、次になぜこれが加算要素になるのか、ということです。
商品の価格というのは、その商品に掛かった「経費」を全て足しあげて作るもので、それは貿易ビジネスでも同じです。
(さらに売手=輸出者の利益も上乗せされるわけですが。)
この「経費」は、単に輸出者が商品の調達や製造のために外部に支払った材料費や加工費といったもの以外にも、その商品のために働く人々(直接、間接に係わらず)の業務に対して支払われる人件費などあらゆるものを含みます。
よって、輸出者が輸入者に請求する価格には含まれているそういった人件費は「貨物のValue」を構成することになります。

問題は、そういった業務を輸出者が自社でやることができない、または、自社でやるより外注(アウトソーシング)した方が効率がいいと考えた場合です。
この場合、輸出者は必要な業務を外注することになりますが、輸出者はいうまでもなくその外注費をコストとして加算して請求します。
外注すれば、外注費はかかりますが、自社内で支払う人件費が減りますから、両者はバーター関係にあります。
つまり、輸出者が自社でその手間=人件費をかけようが、外注費を払おうが、輸入者が支払うべき価格は変わらないということです。
(どちらにした方が安くなるという話はここでは関係ありません。)
誰に対して払おうが、「その商品の輸入取引の完遂に必要なこと」に対する支払いですから、貨物のValueになるわけです。

この「外注費」の支払い方は、基本的に下の2つです。

  • 輸出者から輸入者へのInvoiceに含められて請求され、輸入者が支払う。
  • 輸出者から輸入者へのInvoiceで請求されているのとは別に、輸入者が外注業者に支払う。

貨物のValueに含まれる要素 → 加算要素として、整理するとこうなります。

  • 前者 → Invoiceに含まれているので、そのまま含まれていて構わない(±いずれもしない)
  • 後者 → Invoiceに含まれていないので、含めなければいけない(+する)

なお、加算要素とすべき仲介料は「売手及び買手のために」、つまり、双方のために仕事をしたことについて支払われるものであることが要注意です。
「買手のみのため」に支払われるものは「買付手数料」として、加算要素扱いにはなりません。
これについては、次回説明することにしましょう。