課税価格の考え方 6(買付手数料)

関税定率法第4条第2号の「イ 仲介料その他の手数料」(以下、仲介料等)に関して、受験生の頭を悩ませるのが、「仲介料」と「買付手数料」の違いでしょう。

この両者の違いを単純化すると下のとおりとなります。

  • 仲介料(前回説明したとおり)・・・加算要素
    売手及び買手のために、つまり、双方のために仕事をしたことについて支払われるもの。
  • 買付手数料・・・控除要素
    買手のみのために仕事をしたことについて支払われるもの。

買付手数料は、仲介料とすることにあまり違いがあるように見えないのに、なぜ加算要素にならないかというと、ひじょうに基本的な話です。
そもそも、課税価格とは、関税定率法 第4条第1項によると「当該輸入取引に関し買手により『売手に対し』又は『売手のため』に、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格」です。
ここにあるとおり、「売手のために」支払うものを課税価格とする(加算要素とする)としているわけですから、買手のためだけに支払われる買付手数料は加算されるべきではないわけです。

これは、貨物のValueという点からも考えることが出来ます。
課税価格は、輸入港到着までの貨物のValueですが、なにも特殊な状況がなければ、そのValueは「売手が掛けたあらゆるコスト」を積み上げてValueを上昇させた結果です。
売手がその輸入貨物のために必要とした諸々に対するコストが上乗せされていくものです。
買手が必要とした諸々は、売手にとって「必要なものではないもの」ですから、そういう諸々を買手が自社でやろうが、外注してよそにやらせようが、売手にしてみれば知ったことではありません。
課税価格として考えるべき貨物のValueにすべきではありません。
例えば、買手が輸出地に商品買付けをしにいくとして、それを自社社員(=自社の出張旅費)でやろうが、買付業者(=外注費)にやらせようが、売手の手間は変わりませんから価格が変わることはないでしょう。
やっぱり、買手のためだけに仕事をしたことがは、加算要素とすることが不適なのです。

よって、買付手数料の扱いは下のとおりになります。

  • Invoiceに含まれている  →  含まれていてはいけない(-する)
  • Invoiceに含まれていない → 含まれていなくて構わない(±どちらもしない)

問題は、試験問題では「買付手数料」というわかりやすい表現では出題されないだろうということです。
その場合でも、上記のように「誰のために仕事をしてもらったのか?」をよく考えて見分けをつけて下さい。

ちなみに、この「誰のために仕事をしてもらったのか?」=「(売手視点で)輸入貨物のValueを上昇させているのかどうか?」という観点は、他の費用においても使える考え方なので、意識しておくといいでしょう。