課税価格の考え方 7(容器の費用)

関税定率法第4条第2号の「ロ 当該輸入貨物の容器の費用」は試験でよく出題されるテーマです。
とくに、但書の「当該輸入貨物の通常の容器と同一の種類及び価値を有するものに限る。」の部分と絡めて出題させることが多くなっています。

これは、加算要素となるものは「通常の容器と同一の種類及び価値を有するもののみ」で、「特殊な容器」は加算要素にならないことを意味します。
これを商品のValueという観点で考えてみましょう。

その商品を販売するにおいて容器を使うのは、内容物が漏れないように、小分けするため、商品の保護のため、などの販売上の都合があるためです。
販売上の都合に合わせるためですから、容器のコストは当然のことながら商品のValueを構成します。
もっといえば、容器の封入などをするための作業費や人件費も商品のValueを構成することになります。
つまり、貨物のValueを構成する以上、容器の費用は加算要素となります。

売手がそれらのコストを負担した場合には、買手への商品価格の一部として請求額に含めることになります。
買手がそれらのコストを負担する場合には、売手から請求される商品価格とは別に支払うことになります。
よって、容器の費用の扱いは下のとおりになります。

  • Invoiceに含まれている  →  含まれていて構わない(±どちらもしない)
  • Invoiceに含まれていない → 含まれていなければならない(+する)

ちなみに、この「通常の容器と同一の種類及び価値を有するもの」の範囲としては、基本通達4―10に
「関税率表の解釈に関する通則5(ケースその他これに類する容器並びに包装材料及び包装容器の取扱い)の規定により「当該物品に含まれる」ものとされるケースその他これに類する容器及び包装容器」
と示されてます。
※そういう意味では、この条文を正しく理解するには、通則5を理解する必要もあるということです。

なお、通則5では、「明らかに反復使用に適するような包装材料及び包装容器(例えば、圧縮ガス用又は液化ガス用の金属製のドラム又は鉄鋼製容器)」には適用しないことになっていますから、容器の内容物が使用済み、または、廃棄される際にはその容器も使われなくなるものが対象といえるでしょう。
基本通達4―10で「関税定率法第14条第11号(再輸入する容器の無条件免税)、第14条の2(再輸入減税)又は第17条第1項第2号(再輸出する容器の免税)の規定により、関税が軽減され又は免税されるものを除く」とあることと意味は同じです。

また、通則5では「容器」の定義として「重要な特性を全体に与えない容器」を挙げています。
これは、関税定率法第4条第2号 ロの但書「通常の容器と同一の種類及び価値を有するものに限る。」とあるものと軌を一にします。
では、なぜ「特殊な容器」は加算要素としてはいけないのでしょうか?

前に「税関は、輸出入者や通関業者を1ミリも信用していない。輸出入者や通関業者は密輸をしよう、関税をちょろまかそうと思っているに違いないと考えている。」と言いました。(通関士試験範囲の条文に挑む心構え
その観点、というか、税関職員として取り締まる立場になって考えてみて下さい。
例えば、容器と内容物が全く別々に提示されたときに、関税率が、容器は30%、内容物が無税だったとしましょう。
関税率が30%ということは、その容器が高価がものであったら関税額もけっこう高くなります。
もし、どんな容器であっても、容器の価格を含めた価格で内容物の関税率(無税)が適用されるとなれば、輸入者はどうかんがえるでしょう?
内容物にマッチしていないとしても、無理矢理にでもその容器に内容物を詰めて「容器だから内容物と同じ関税率ですよね!」と主張する者がでてくるかもしれません。
現在の関税率で、そうすることが得になる組み合わせがあるかどうかは別にして、考え方としてはそういう税逃れをさせないためのルールなわけです。

では、次はこの「容器」と間違えやすい「包装」について読み解いてみましょう。