郵便通関と一般通関の相違点 その1

通関士試験の勉強の中で、郵便通関を苦手とする方は意外と多いようです。
その理由としては、条文の読み解き方のややこしさ、とくに関税法第76条(郵便物の輸出入の簡易手続)の項で、一般通関の多くの規定を「適用しない」としながら、後の条文で同じような規定を復活させていることが挙げられるでしょう。
その結果、流れや規制内容が一般通関と同じなのか、異なっているのか混乱してしまうわけです。

そこで、まずは第76条で適用しないとされている一般通関の規定を列挙してみます。

  1. 第67条(輸出又は輸入の許可)
  2. 第67条の2(輸出申告又は輸入申告の手続)
  3. 第67条の3~18(輸出申告の特例関係の各条文)
  4. 第68条(輸出申告又は輸入申告に際しての提出書類)
  5. 第69条(貨物の検査場所)
  6. 第70条(証明又は確認)
  7. 第71条(原産地を偽つた表示等がされている貨物の輸入)
  8. 第72条(関税等の納付と輸入の許可)
  9. 第73条(輸入の許可前における貨物の引取り)

では次に、郵便通関で復活するものを見ましょう。

  1. 第73条の2(輸出を許可された貨物とみなすもの)、第74条(輸入を許可された貨物とみなすもの)で、復活しているといえるでしょう。
  2. 完全に該当するとはいえませんが、第76条第1項の最後~3項がほぼあたると言えるでしょう。
  3. 輸出申告の特例に係るものは、郵便通関で該当するルールが無いので、該当するものはありません。
  4. 郵便通関では、輸出者や輸入者に書類の提出は求めないので、該当するものはありません。
  5. 第76条第3項~6項がほぼあたると言えるでしょう。
  6. 第76条第4項で「第70条の規定は(略)郵便物について準用する」とありますので、丸々復活しています。
  7. 第78条(原産地を偽つた表示等がされている郵便物)で復活しています。
  8. 第77条(便物の関税の納付等)、第77条の2(郵便物に係る関税の納付委託)、第77条の3(日本郵便株式会社による関税の納付等)が該当する部分です。
  9. 第76条の2(交付前郵便物に係る関税の徴収)で復活しています。

よって、3.、4.以外については、郵便通関でもほぼ同じ規定があるといえます。
しかし、この「ほぼ」というのが曲者で、微妙に違うところがあるからこそ間違えやすかったりします。
上記のように規定を並べて、両者で「違うところ」をチェックしていくことによって、細かい引っ掛け問題に対応できるようになることが重要です。

なお、関税法第69条と第70条の間には、第69条の2から第69条の21までの条文が挟まっています。
これは、第76条で「適用外とされない」方の条文ですが、ここにはなにがあるのかというと、「輸出してはならない貨物」、「輸入してはならない貨物」(認定手続関係の内容を含む)の規定です。
つまり、これらの規定については、郵便通関でもそっくり適用を受けるというわけです。