為替予約の受渡日・期日

貿易実務検定で、為替予約票の「受渡期日」に関する問題は主に下の2つのパターンになります。

  • 受渡日・期日の種類
    受渡日の設定方法の説明文があり、それが確定日渡し、順月渡し、暦月渡しなどの受渡期日の種類のうち、どれになるのかを問う問題。
  • 受渡日・期日をいつに設定するか
    決済方法や貿易金融の状況、受渡日・期日の種類を挙げ、「適切な受渡日・期日はいつなのか」を問う問題。

前者は比較的簡単で、主要な5種類の意味を理解すれば解けます。
出題回数も多く、これまでの出題事例では、暦月渡し(暦月オプション渡し)の意味が解っていれば、消去法で解ける問題が多いようです。

難易度が高いのは後者です。
出題頻度はそれほど高くないのですが、公式テキストにもあまりはっきりとした記述がないことが難易度を引き上げていると思います。
結論からいうと、「通貨転換を行うターゲット日(期間)はいつか?」、より詳しく言えば、「輸出者や輸入者が、いつ代金の入金や支払いをするための通貨転換を行うのか」を考えることになります。
それには、貿易ビジネスの時系列的な流れがわかっていないと難しく、そして、為替予約、決済の流れ、貿易金融の3つ関連を総合的に理解している必要があります。

具体的に、いくつかシチュエーションを挙げて考えてみましょう。
まずは、輸出者の場合です。

  • 送金決済の場合
    → 契約で取り決めた決済期日を含む、前後ある程度の期間(だいたい一ヵ月間)
    輸入者が決済期日に送金手続きをしたとしても、銀行間決済に日数がかかり、その日数も正確にはわからないので、幅を持たせた方がいいためです。
  • 荷為替手形決済 一覧払い、取立扱いの場合
    → 契約で取り決めた船積期限に船積書類の郵送期間(メール期間、10日程度)を加えた日を含む、前後ある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    輸出者の口座への入金・通貨転換のタイミングは、輸出者が荷為替手形を輸入地に送り、輸入者が為替手形を一覧して決済、その後、銀行間決済をした後です。しかし、メール期間と銀行間決済にかかる日数は厳密に予測できないので、幅を持たせた方がいいためです。
    また、船積期限よりも早く船積みをし、決済も早まる可能性も考慮に入れます。
  • 荷為替手形決済 期限払い、取立扱いの場合
    → 契約で取り決めた船積期限に船積書類のメール期間、そして、契約で決めたユーザンス期間を加えた日を含む、前後ある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    輸出者の口座への入金・通貨転換が、上述の一覧払いの場合よりもユーザンス期間分遅くなることを考えればわかると思います。
  • 荷為替手形決済 買取扱いの場合
    → 契約で取り決めた船積期限を含む、前後ある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    輸出者の代金入金・通貨転換のタイミングは、輸出地銀行(買取銀行)に荷為替手形を買い取ってもらうときですが、船積期限よりも前に船積みをし、買取に出す可能性も考慮に入れて、船積期限より前でも通貨転換できるよう、幅をもたせます。
    これは、L/C付き、L/C無しのいずれの場合でも同じです。

次に、輸入者の場合です。

  • 荷為替手形決済 一覧払いの場合
    → 契約で取り決めた船積期限に船積書類の郵送期間(メール期間、10日程度)を加えた日を含むある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    輸入者の支払い・通貨転換は、為替手形を一覧するタイミングですが、これは、輸出地での船積みが終わり、荷為替手形が郵送されてきた後ということになります。
    船積期限よりも早く船積みされる可能性も考慮に入れて、幅を持たせます。
    なお、輸入金融として直ハネを使う場合も、輸入者の通貨転換はこのタイミングですので、同じになります。
  • 荷為替手形決済 期限払いの場合
    → 契約で取り決めた船積期限に船積書類のメール期間、そして、契約で決めたユーザンス期間を加えた日を含む、前後ある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    輸入者の支払い・通貨転換は、ユーザンス期間の後ですので、上記一覧払いの場合よりも、ユーザンス期間分遅くなることを考えればわかると思います。
  • 荷為替手形決済 一覧払いで本邦ローンを利用する場合
    → 契約で取り決めた船積期限に船積書類のメール期間、そして、本邦ローン期間を加えた日を含む、前後ある程度の期間(だいたい1ヵ月間)。
    本邦ローン利用時において、輸入者の支払い・通貨転換は、為替手形を一覧するタイミングではなく、ローン期日になりますから、その時点をターゲットとするわけです。
    なお、本邦ローンに引き続いて輸入跳ね返り金融を利用する場合には、円貨での金融になりますが、この円貨への通貨転換は本邦ローン期日になることにも注意が必要です。

このように見ていくと、気付く方もいると思いますが、輸出者は取立扱い/買取扱いの別によって、輸入者は本邦ローンを利用する/利用しないの別によって、通貨転換のタイミングが違います。
ということは、為替予約をする時点で、上記の選択を決めておかないと適切な受渡日・期日を設定できないということです。
これは実務的にもひじょうに重要なポイントです。
上述のとおり「貿易ビジネスの時系列的な流れ」、「為替予約、決済の流れ、貿易金融の3つの関連」を総合的に理解している必要があるといった所以です。

今回挙げたものの他のシチュエーション(例えば、P.P.ネゴを使う場合とか)についても、みなさんで考えて見れば、この類の問題で迷うことはなくなると思いますよ。