貿易実務検定 B級向けテキストはどれがいい?

前回は、貿易実務検定C級レベルのテキストについて、結論として「どのテキストでも構わない」とお話ししました。
今回はB級レベルについてです。
C級と違い、B級ではオフィシャルテキスト、つまり、「貿易実務ハンドブック アドバンスド版」(能率協会マネジメントセンター)がベストといえるでしょう。
その理由としては、B級試験の独特さにあります。

B級貿易実務科目では、いくつかの貿易書類間での記載内容の連関を問う「貿易書類問題」が出題されます。
貿易書類は、記載内容こそほとんど同じですが、体裁については各社で微妙に違います。
結果として、各社のテキストは、執筆者の経験に基づいた体裁になりなます。
貿易実務検定で出るフォーム、また、オフィシャルテキストも、いわば「検定協会式フォーム」と言ってもいいものです。
よって、そのフォームに慣れることで解答時間が節約できるという意味で、オフィシャルテキストがB級試験対策に向いていると言えるわけです。

また、B級貿易マーケティング科目では、輸出/輸入マーケティングだけでなく、一般的なマーケティングもその内容が入ります。
マーケティングというのは実に範囲が広いので、漠然と勉強していると時間がいくらあっても足りません。
よって、試験に対応した範囲に一応は絞りこまれているオフィシャルテキストが向いていると言えます。
※ただし、B級試験の内容とテキストの内容には不一致があるという指摘も結構あります。

さて、このB級向けのオフィシャルテキスト「貿易実務ハンドブック アドバンスド版」は、昨年11月下旬に改訂第5版が出版されました。
前の版は「B級、準A級用」でしたが、準A級がA級に統合されたので、「B級、A級用」になっています。
そのため、「UCP600 と ISBP745」と「貿易取引の事故事例」というセクションが加わっています。
B級試験ではUCP600(信用状統一規則)に係る問題がけっこう出題されます。
また、UCP600の逐条解説は、これまでは国際商業会議所 日本委員会 などが発行する高い解説書を購入する必要がありましたので、これだけでもこのテキストを購入する価値はあると言えます。

残念な点と言えば、セクションが2つ増えているにも関わらず、総ページ数は前版とほとんど変わっていないことです。
これは、貿易マーケティングのページが大幅に減ったためで、一般的なマーケティングの項がなくなり、輸出/輸入マーケティングだけになりました。
上述のとおり、これまでもB級試験の内容とテキストの内容には不一致があったのですが、一般的なマーケティングの項が無くなったことで、この部分は別のテキストで学習しなければならなくなりました。
検定協会としては、実施主体が実質的に同じである「マーケティング・ビジネス実務検定」(国際実務マーケティング協会主催)を受験して欲しい、そのためのテキストを購入して欲しいという意図があるのかもしれません。
※マーケティング・ビジネス実務検定に合格すれば、B級の貿易マーケティング科目が免除されます。

また、これはC級でも同じなのですがオフィシャルテキストには下の2種類があります。
・能率協会マネジメントセンターが刊行し、書店で購入できる、
「貿易実務ハンドブック ベーシック版/アドバンスド版」
・MHJ出版が刊行し、直販のみで購入できる、
貿易実務 ベーシックマニュアル/アドバンストマニュアル」

価格もほとんど同じで、どちらを買えばいいのかいう質問もよく頂きます。
実はこの両者は、ほぼ同じ内容です。
後者は、貿易実務のスクールであるマウンハーフジャパン等で使用されているテキストですが、それを一般販売用にしたものが前者というだけの話です。
前者は、出版社の手が入っていますので、字体や図表などの体裁も見やすいと思います。
また、書店で内容を確認しやすいというのも、購入する立場としては有難いと言えます。
後者は、字体や体裁に稚拙さがありますが、判型が大きいので貿易書類が見やすいのがメリットです。
しかし、直販のみですので購入前に内容を確認できないのが、購入者としては二の足を踏むところです。
私としては、総合的には前者に軍配を上げますが、皆さんそれぞれ好みの方を選べばいいと思います。(I)