「課税物件確定の時期」は「理解」で乗り越えよう!

通関士試験の勉強をしている方を悩ませるのが、「課税物件確定の時期」と「適用法令の日」、「法定納期限」と「納期限」です。
様々なテキストで、時系列図で説明し、一覧表を掲載したりで、皆さんに覚えてもらおうとしていますが、「覚える」のはなかなか大変です。

しかしここでちょっと考えてみて下さい。
税関(財務省)は、なんの法則も整合性もなく、皆さんを混乱させるようなルールを決めているのでしょうか?
もちろんご存じのとおり関税法は、原則だけでなく例外規定が多いのは事実ですが、ちゃんと基本的なロジックはあり、そこを理解すると楽になります。
今回はそれを考えてみましょう。

まずは「課税物件確定の時期」です。
これが定められている趣旨は「どの時点の貨物の性質・数量に関税を課すのか」を明らかにする必要があるためです。
ですので、そのタイミングは「税関長(実際は税関職員ですが)が、貨物の性質・数量を確認する時」とすることが妥当であることがわかると思います。
例を挙げてみましょう。

まずは、税関長が貨物の状態を確認できる場合です。

  • 通常の輸入の場合
    輸入申告された貨物に対しては、税関が検査をすることになっています(現実には、現物検査はそんなに行われませんが)ので、「輸入申告の時」となります。
  • 蔵入承認、総保入承認、移入承認、展示等承認された貨物の場合
    いずれの場合についても、承認の際には「税関職員に外国貨物について必要な検査をさせるものとする」とあります。
    よって、この「承認の時」となります。
    例外として、蔵置中に欠減が生じるものとして政令で掲げられているものは、「輸入申告の時」となりますが、これは本当にこのルールの中ではレアな例外規定です。
  • 保税工場、保税展示場、総合保税地域外での使用など(場外使用、場外作業)の場合
    いずれの場合についても、これらの許可の際には「税関職員に必要な検査をさせるものとする」とあります。
    よって、この「許可された時」となります。
  • 保税運送の場合
    承認の際には「税関職員に同項の貨物の検査をさせることができる」とあります。
    よって、「保税運送の承認の時」となります。

一方、AEO制度などの場合など、税関長が貨物の確認をできない、または、できない場合もあります。
その場合は、保税地域から出る/出すための行為が行われた、または、その状態となった(完了)と判断されるタイミングとなります。

  • 特定保税運送の場合
    通常の保税運送のように貨物発送時の承認というプロセスがなく、税関職員が貨物の検査を行いません。
    よって、発送状態になった時になるので、「外国貨物が発送された時」になります。
  • 保税展示場の期間満了後に税関長の指定期間内に搬出されていない外国貨物の場合
    時間の経過によって、自動的に「置いていい場所」→「置いてはいけない場所」に変わるので、税関職員による貨物の検査後に保税地域から出されるものとが違います。
    よって、置いてはいけない場所になった時になるので、その期間終了時、法令的には「関税を徴収すべき事由が生じた時」になります。
  • 輸入許可を受けずに輸入された貨物の場合
    許可受けずに輸入ということは、輸入申告もしていないわけで、税関職員が検査するタイミングがありません。
    よって、保税地域から出たタイミングということになりますので、「輸入の時」ということになります。

このように、いくつかの例を挙げてみましたが、その他の状態もこのロジックで考えることができます。
その点では、試験に出題されるようなもので本当の例外となるのは、上述の「長期蔵置された貨物で蔵置中に欠減が生じるもの」のみだったりします。

ポイントとしては、「課税物件確定の時期」を単独で「覚える」のではなく、他の項目での様々な手続きの流れ(この場合は、税関職員の検査の有無、ある場合はそのタイミング)を丁寧に理解することができていれば、課税物件の確定の時期は自ずからわかってくるということです。
これまで「なかなか覚えられなかった」という人は、こっちの視点からアプローチするのがいいと思いますし、そもそも他の項目と連動して覚えられるので得点もアップすると思いますよ。