「適用法令の日」も「理解」で乗り越えよう!

次に「適用法令の日」です。
これにもちゃんと基本的なロジックはあり、そこを理解すると楽になります。
今回はそれを考えてみます。

「適用法令の日」が定められている趣旨は「いつの時点で有効な法令によって関税を課すのか」を明らかにする必要があるためです。
端的に「いつの時点で有効な関税率表を使って関税の算出を行うのか」と言った方がわかりやすいかもしれません。
法令は日単位で改正されるので、「適用法令の”日”」となるわけですが、「日本の政策(税制など)を反映させるのにもっとも妥当、かつ、税関長が確定できる日」となっています。
そして「日本の政策(税制など)を反映させるのにもっとも妥当」な日としては、「税関長が、貨物を保税地域より出すことを認める行政行為を行ったタイミング」という考え方になっています。

これは、例を挙げてみるとわかります。

  • 特例輸入者/特例委託輸入者が輸入申告を行う場合
    税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行政行為は、「輸入の許可」です。
    よって、「輸入の許可の日」になります。
  • 保税工場、保税展示場、総合保税地域外での使用など(場外使用、場外作業)の場合
    税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行政行為は、すなわち、「場外使用、場外作業の許可」になります。
    よって、それぞれがこの「許可された日」となります。
  • 保税運送の場合
    「保税運送の承認」が税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行政行為にあたります。
    よって、「保税運送の承認の日」となります。
  • 蔵入承認や移入承認、総保入承認を受けた貨物が、輸入申告された後、輸入の許可がされる前に法改正があった場合
    「輸入の許可」が税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行政行為にあたります。
    よって、「輸入の許可の日」になります。
  • 蔵入承認や移入承認、総保入承認を受けた貨物が、輸入申告された後、BP承認がされる前に法改正があった場合
    「BP承認」はすなわち、税関長が輸入許可の前に貨物を保税地域より出すことを認めるものです。
    よって、「BP承認の日」になります。

一方、税関長が当該貨物が保税地域から出されるタイミングを確認しない、または、できない場合もあります。
その場合は、保税地域から出る/出すための行為が行われた、または、保税地域から出たと判断されるタイミングが「保税地域から出た」と推定して、その日が適用法令の日となっています。

  • 特定保税運送の場合
    通常の保税運送時の保税運送の承認という、税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行為が行われません。
    よって、発送=保税地域から出す行為が行われたと判断されるタイミングとして、「外国貨物が発送された日」になります。
  • 保税展示場の期間満了後に税関長の指定期間内に搬出されていない外国貨物の場合
    時間の経過によって、自動的に「置いていい場所」→「置いてはいけない場所」に変わりますが、これが実質的に保税地域から出すことと同じと考えられます。
    しかし、そのタイミングにおいて、税関長がなんらかの行政行為を行ったわけではないので、その期間終了の日、法令的には「関税を徴収すべき事由が生じた日」になります。
  • 輸入許可を受けずに輸入された貨物の場合
    許可受けずに輸入(=本邦への持ち込み)ということは、税関長が貨物を保税地域より出すことを認める行為をしていません。
    よって、その輸入された日が保税地域から出す行為が行われたと判断されるタイミングとして、「輸入の日」になります。

と述べてきましたが、一番の基本となる「通常(長期蔵置していない)の輸入の場合」が挙がっていません。
上記のルールで考えると「輸入の許可の日」になりますが、そうではなく、これは「輸入申告の日」です。
実は、「適用法令の日」については、この一番の基本が「例外」にあたるのです。

その理由を例で考えてみましょう。
AさんとBさんが、同じ日に同じ貨物を輸入申告したとしましょう。
そして、輸入申告後に法令改正(関税率の変更)があり、Aさんは法令改正前に輸入許可が下り、Bさんは法令改正後に輸入許可が下りたとします。
この許可が出るタイミングの違いは、税関の混雑具合や税関職員の審査の手際が主な理由です。
いうなれば、税関の都合というわけで、それによって同じ日の輸入申告した人に適用される関税率が違うのは不公平が生じます。
よって、どうせ短期の話、つまり、すぐに保税地域から引き取る貨物なので、公平性をより重視して「輸入申告の日」を適用法令の日とするわけです。
長期蔵置しない貨物をBP承認を受けて保税地域から出す場合も同じです。

一見「基本」に見えるものが、実は「例外」という面白い逆転現象ですね。

ポイントとしては、「課税物件確定の時期」の場合と同じく、単独で「覚える」のではなく、保税地域から出る/出すタイミングはいつなのか、そのために税関長が何らかの行政行為がおこなっているのかを丁寧に理解することが大事、その理解ができていれば、適用法令の日も自ずからわかってくるということです。

いろんなシチュエーションを上記のルールで考えてみて、それが実際にどうなっているのかテキストで確認してみる、そうすると覚えやすくなりますよ。